Story of Stars! | ナノ

いつもの生徒会室




毎日通っている部屋に、いつもより少し遅れて入る。この時間なら全員そろっているはず。今日はやることが結構あるので真面目にやってくれていればいいのだけれど。

「こんにちはー」
「おう、千鈴!」
「あ、千鈴せんぱーい」
「こんにちは、山ノ井先輩」

……期待なんてしていなかった。
きちんと机に向かって作業をしていたのは、生徒会会計である吉原いつきだけ。会長の小鳥遊海斗と書記の小野川彗は、何かよくわからないものをいじっている。また彗くんが作った変な機械なのかしら。

「いつき君、お疲れ様」
「いえ……山ノ井先輩、注意しないんですか?」
「しても無駄だから……とりあえず放っておく」
「それはいいと思います」

なにやら盛り上がって騒いでいる二人を無視し、私は決められた場所に座って書類整理を始める。

「……なあ、彗」
「なんスか会長ー」
「おまえが言ってたのと違う動きしてねぇか、コイツ」
「えー?そんなこと……あ」

二人の会話の内容が、なんだか怖い。今までだって、彼の持ってきたものはいつだって生徒会室を無茶苦茶にしてきたし……。そう思ってちらりと二人の方を見れば、人のような形をした小さな機械が、何やら変な動きをしている。あれは一体何なの……。

「山ノ井先輩」
「えっ、あ、どうしたの?いつき君」
「危ないです。書類が散らばらないようにしてください」
「え……」
「先輩はやく」
「あ、うんっ」

いつき君に急かされた私は、慌てて目の前にある書類の束を胸元に抱える。それからぎゅうっと縮こまっていると、二人が触っていた機械が変な音を立てて教室を飛び始めた。

「ちょっ、なんで飛ぶんだよ彗!?」
「あっれぇー?こいつ飛ぶっけ?」
「おまえが持って来たんだから止めろよ彗!!」
「なんでオレなんスか!オレだってなんで飛んでんのかわかんない!!」
「山ノ井先輩頭下げて」
「あ、うんっ」

言われた通り頭を下げると、私の頭の真上をあの機械が飛んでいった。いつき君が言ってくれてなかったら、激突してたよね……!

「ちょっと会長、なんとかしてくださいっ」
「出来るかっ!出来たらやってる!!」
「彗くん!」
「ちょっと先輩、聞いてました!?オレにもコイツがなんで飛んでんのかわかんないですってば!!」
「もう……!」

慌てる私たち三人に対して、いつき君だけはいつも通り座ってその光景を眺めている。ただ、飛んで来る機械はきちんと避けている。なんでそんなこと出来るの……!!

「誰でもいいから、なんとかしてくださいっ!!」
「失礼しまーす」

男子生徒の声と同時にガラッとドアが開く。タイミングの悪いことに、飛び回っている機械はそのドアに向かって一直線。これは、まずい。

「危な……っ、」
「きゃっ!?」

ドアからは女性の声とぱしっと何かを掴んだ音。その後は機械のモーター音だけが聞こえてきて、それもすぐに止まった。

「大丈夫ですか、莉緒先輩」
「う、うん、平気……ちょっとびっくりしただけ。拓斗君こそ大丈夫?」
「僕は全然平気です。慣れてますから」

そうして女生徒に向かって微笑みかけた後、男子生徒――吉岡拓斗は、彗君をキッと睨み付けた。

「ちょっと彗、先輩が怪我でもしたらどうするつもり?」
「なんでオレのせいなんだよ!」
「彗が変にいじったからこうなったんだろ」

いつも通りの言い争いが始まった。その間に、吉岡君の後ろにいた女生徒、藤咲莉緒はこちらへやってきて、そっと紙の束を私に差し出した。

「これ、部の活動報告書です。遅くなってごめんなさい」
「あ、いえ。ありがとうございます」

胸元に抱えていた書類を机に置き、その書類を受け取る。それから藤咲さんが苦笑を浮かべながら、まだ言い争いを続けている二人を見た。

「拓斗君、部室に戻るよー?」
「あっ、はい!」
「失礼しました」

吉岡君はぴたりと言い争いを止めて、藤咲さんに続いて生徒会室を出ていった。

「ったく、拓斗のヤツー!」
「……彗君、会長。もう充分遊びましたよね?」
「ち、千鈴……?」
「千鈴先輩、なんか怖い……」
「今日中にやらなきゃならないことがあるんです!さっさとやってください!」
「あ、僕は手伝いませんからね」
「えっ、マジかよいつき!?」
「当たり前です。やらなきゃいけないこともやらずに遊んでる人の手伝いなんてしません」
「そういうことです。会長も彗君も、諦めてやることやる!」
「はーい」
「うう……」

やっと、やることをやり始めた二人を見て、私はつい、重たいため息をもらす。けど、この生徒会はとても好き。なんだかんだでここが好きなのだ、私は。








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