Story of Stars! | ナノ

いつもの風景




胴着に着替えて気合いを入れ、そっと道場に入る。しかし、まだ練習は始まっていなかったらしく、部員たちはそれぞれ好きなようにくつろいでいた。

「そろそろ部活開始時間では……」
「あっ、楓先輩!」
「……渉」
「僕、お菓子作って来たんです!食べませんか?」
「後でもらう。ありがとう。それより、そろそろ開始時間だろう?」
「ああ。月穂先輩が少し遅れて来るから、それまで自由にしてていいって」
「なるほど……なら仕方ないか。」
「あっ、藤咲先輩が来てますよ」
「莉緒が?」
「はい。さっきまで話してたんです」

にっこり笑って渉が見た方を追って行けば、そこにはいつも通りに座っている、莉緒。ぱちっと目が会えば、笑みを向けられる。

「二人、仲良いですね」
「小さい頃から一緒だからな」
「幼なじみにしても、仲良すぎじゃありません?」

莉緒の方へ歩き始めながらそう言えば、後ろをついてきた渉がそう聞いた。私はちらっと渉を見て、すぐに前を向く。

「僕の知ってる幼なじみは、よくケンカしてるんですよ。だから、幼なじみってケンカばっかりなんだと思ってました」
「それは人それぞれだろう」
「まあ、そうですよね……」
「……莉緒」
「あっ、楓ちゃん」

私は莉緒の隣に腰を下ろし、渉は私たちの前に座って、作って来たお菓子の入った箱を置いた。

「先輩、よかったら食べてください!」
「ありがとう、深海くん。きみのお菓子、おいしいからすごく好きなの」
「ほんとですか!ありがとうございますっ!楓先輩も食べてくださいね」
「ああ、ありがとう」
「今日も最後までいていい?」
「構わないが……演劇部は?」
「今日はおやすみなの」
「そうか」

そんなやり取りをしていると、道場の扉が勢いよく開き、しっかりした声が響く。

「アンタたち!休憩時間は終わりよ!!」
「あ、月穂先輩」
「練習がんばってね、楓ちゃん」
「ああ」
「深海くんもね」
「ありがとうございますー」

莉緒は練習に行く私たちを笑顔で見送ってくれて、静かに剣道部の練習を眺めていた。








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