町の手前でソウの傷を気遣って休憩することになった四人。ユーキはソウの包帯を替えている。アイリスはその近くでぶつぶつ呟きながら地面に何か――どうやら魔法陣のようだ――を書いているリアに近づく。

「リアさん」
「……どうしたの?」
「リアさんは天才、なんですよね」
「天才って……まあ、周りはそう言ってるけど、あたしなんて天才って呼ばれるほどすごくないわよ。知らないこともあればできないこともある」
「そう、ですか……」
「どうしたの?」
「いえ……治癒術、リアさんならわかるかなって」
「え?」

今まで地面の魔法陣に落ちていたリアの目線がアイリスに移される。彼女は目線を落とし、そっと目を伏せる。

「……嫌なんです。私のせいで傷ついたのに治せないなんて」
「だからって、なんでアイリスが治癒術を使うのよ?町にはちゃんと医者がいるし、問題はないわ」
「あなた方は、危険なことをしてまで私のこと連れ出してくださったじゃないですか」
「……そうね」
「そんな方たちの足を引っ張りたくはないんです。でも私、戦闘経験なんてありませんし……」

どんどん声が小さくなっていくアイリスにため息をつき、パンっと手を鳴らす。その音にアイリスは肩をびくりと震わせ反射的にリアを見る。

「あ……ごめんなさい」
「なんで謝るの?……ここに手をかざして」
「え?」

先ほどまでリアが書いていた魔法陣を指差され、アイリスは目を丸くする。魔法陣の上には羽根が傷ついて飛べなくなってしまった小鳥がいた。

「さっきから治癒術を使ってみようとしてるんだけど、やっぱりあたしには合わないみたいだわ。だからアイリス、やってみて」
「……あの」
「どうしたの?」
「この小鳥は……」
「さっきそこで見つけたの。羽根が傷ついて飛べなくなったみたい。……アイリス?」

リアの言葉を聞いたアイリスは小鳥を両手で救い上げるようにし、胸元まで持ってくる。それから目を閉じ、小さく呟いた。

「痛かったでしょう……」

すると彼女の手に小さな光が灯り、小鳥の羽根を治していく。

(魔法陣を使っていないのに……!!)

リアは最初、目を丸くしてその様子を見ていたが、すぐにじっと観察するような目に変わった。
数秒後には光が収まり、アイリスの手から先ほどの小鳥が飛び立っていった。

「……今のってどうやったの?」
「え?えっと……すみません、私にもわからなくて」
「そう……あなた、治癒術向きだわ」
「え」
「町についたら治癒術の本、買ってくるから。それ読めば大体は使えるようになるわ」
「あ……っ、ありがとうございます、リアさん!」
「どういたしまして。あとそのリアさんってのやめてよね」
「え?」
「呼び捨てでいいわ」
「……はい、リア!」

にっこり笑ってリアに頭を下げた後、アイリスは休憩が終わるまでリアの隣で魔法陣をじっと見つめていた。




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