ピンクの花弁がやわらかい風に吹かれてふわりと舞い、町は人々の声でとても賑やか。明日から、町で祭りが開かれるらしく、皆が忙しそうに動いている。
そんな人たちの中、ゆっくりと、キョロキョロ辺りを見回しながら歩いている三人組がいた。
「小さい町なのに城まであるなんて初めてだわ」
「ほんと、賑やかだねー」
「明日からお祭りがあるらしいわよ」
「……暴れんなよ、リア」
「ないわよ馬鹿ユーキ!」
リアと呼ばれた少女は、ユーキと呼ばれた男にムッとして手をあげたがすぐにハッとして手を下げる。
「にしても、見つからないねー宿屋」
「笑ってる場合じゃねーよ、ソウ」
へらっと笑ってさらりと宿屋が見つからないと言ったのはソウと呼ばれる男。
彼の言葉に、リアは補足をするように口を開く。
「道具屋もないわよ」
「困るな、それは」
「だよねー」
「どうすんの?ユーキ」
「んー……」
「あ!」
考え込んだユーキの横で、ソウは思い付いたように声をあげた。
「とりあえずあそこの女の子に話を」
「ストップっ」
走り出しかけたソウの片手を掴んで彼をひき止めたのは、リア。
「ん?どうしたの?」
「兄さんはここに居て」
「あ、もしかして嫉妬?」
「違うわよ馬鹿兄貴。兄さんが女の子のとこに行くと長くなるでしょ」
「馬鹿……!?」
リアに馬鹿と言われたことが余程ショックだったのか、ソウはずーんと落ち込んでしまった。
「ったく……くだらないことでんな落ち込むなよな」
「くだらなくない!」
「あーもーそのシスコン治せ」
「あたしあっちの方に話を聞いてくるわね」
「あ、ちょ、待てよリア!」
そんな風に騒いでいると、彼らに近づく影がひとつ。
「あの、」
影の正体は村の少女。
大人しめでかわいらしい子だ。
「あなたたちは、旅人様ですか?」
「様って……。まあ、そうだけど」
「あ、もしかして宿、」
「宿屋探してるんですけど知りませんか!?」
少女に近づいたソウを突き飛ばして勢いよく質問するリアに、彼女は少し後ずさる。
「リアーその子怖がってんぞー」
「あ、あの、宿屋でしたら――」
少女はにっこり笑って、丁寧に宿を教えてくれたのだった。
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