アイリスが軟禁されていた部屋を出て、廊下の角で止まり兵士がいないかを確認し、また走り出して角まで来たらまた止まる。この動作をしばらく繰り返し、また角で止まったとき。
「あ、あの……っ!」
「どうした?」
今まで廊下の様子を見ていたユーキが、アイリスの方を見る。彼女は、不安そうな表情でユーキを見つめていた。
「本当に、よろしいのですか」
「……は?」
「このままだと皆さん、誘拐犯になってしまう可能性があります」
アイリスは段々と顔を下げ、ユーキからは表情が見えなくなっていた。
「初めて会った方にそこまでしていただくわけには――」
「ばーか」
「っ、」
「これは、俺たちがやりたいと思ってやったことだ。お前が気にすることじゃねえよ」
ユーキが頭を撫でてやれば、アイリスは少し泣きそうな顔でふわりと微笑んだ。その笑みにユーキも笑みを返し、二人はまた走り出した。
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