城に軟禁された姫を連れ出す計画を立ててから半日ほど。彼らは旅に出る準備を済ませ、小さな荷物を持って彼女の待っている部屋へと向かい、見張りたちが帰って来ない内に中に入る。
彼女が帰ってきてからすぐに作戦内容を話し、確認した。

「よし。じゃあ早速実行しましょ」
「だな。ふたりとも、作戦通りに頼むぜ」
「オッケー」
「任せなさい!」
「……あの、」

目の前で進んでいく話を黙って聞いていた姫は、不安げにそっと手を挙げる。

「私は本当に叫ぶだけでよいのですか?」
「ああ。……そんじゃ頼んだぜ、姫様」
「…………私、姫様なんて名前じゃありません」

彼女は凛とした表情でユーキたちを見据え、胸にそっと手をあてた。

「私には、アイリス・ファリアナ・ストレプトという名前があります」

それを聞いたユーキはふわりと笑い、姫様――アイリスに対して、口を開く。

「そりゃ申し訳ありませんでした、アイリス様。……じゃ、頼む」
「はい」

アイリスはこくんと頷いた後、自分を落ち着かせるために深呼吸をしてからすうっと息を大きく吸い込み――

「きゃああああっ!!」

と、大きく叫び声を上げたのだった。




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