「ここから連れ出してやる」
ユーキがそう言い放った瞬間、アイリスは黒く綺麗な目を丸くした。
「……え?」
「ここから出たいってんなら連れ出してやる。……一緒に旅もできる」
ユーキのまっすぐな瞳。
姫様はユーキから少し目線を外し、複雑そうな顔をする。
「……でも、あなた方にご迷惑をおかけしてしまいます」
「俺は別に構わねぇ。……リアもソウも、迷惑だなんて思っていない」
ユーキから二人の名前が出たので姫がちらりとリアとソウを見る。その視線を感じた二人はそっと口を開く。
「迷惑だなんて思ってないわよ」
「僕たちが君を連れ出したいって言い出したんだしね」
そんな二人の答えを聞いて、姫は何かを深く考えるように黙り込んでしまう。
そんな彼女に、ユーキはスッと片手を差し出した。彼女はその手を見て、ふとユーキの顔を見上げる。
「あんたが出たいってんなら、俺たちはあんたの願いを叶えてやる」
「……」
「どうするかはあんたが決めたらいい。強制はしないから」
彼女はそれを聞いて一瞬考えた。
しかし、その後すぐに決心したような表情になり、ユーキの手をそっと取った。
「……連れて、行ってください」
その言葉を聞いて、ユーキはにっと笑って彼女の手をしっかり握り、視線を合わせるようにしゃがんだ。
「姫様誘拐計画を練るぞ。ソウ、リア」
「わかってるわよ」
「はいはーい」
みんなで姫の周りに集まり、静かな作戦会議を始めたのだった。
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