summer2






「そうだ、キャンプ行こうぜ」

そう言って唐突に拓哉は立ち上がった。

「チャリでどっかの山に行こう」

そんな急な思い付きで行けるものなのか。準備とか色々と手間だろう。拓哉も大変だな。

「今日行こう」

……まあ、こいつなら死にはしないだろう。

「カイも準備しとけ」

座っていた俺の腕を引っ張り拓哉は俺を立ち上がらせる。
なぜ俺もなのだろうか。
その後、俺は色々な理由をつけて断ろうとしたり、無謀さを解説したりした。
だが、半ば強制的に拓哉との心中が決まった。

「じゃあ俺、準備しに一回帰ってまた来るわ」

颯爽と駆けていった拓哉。無視して籠城しようかとも思ったが、あとから五月蝿そうだったため、しぶしぶ準備を始めることにした。
最悪死ぬかもしれない。別に構わないが。
一応、親へのメモも残しておいた。どうせ1日か2日くらいだろうから必要ないかもしれないが。

準備を終え、俺は家の前で拓哉を待っていた。

暫くすると、大きな荷物を背負った拓哉が自転車で坂をかけ下りてきた。少し荷物が大きすぎやしないだろうか。

「おお、早いな!じゃっ行くか」

走り出す拓哉の後を追う。行き先は分かっているのだろうか。自分で行くと言った手前、それを把握していないわけがないか。そんなことを考え、行き先は拓哉に任せ、俺はひたすらに拓哉の後ろをついていった。

「なあ、俺らどこに向かってんだ?」

拓哉は自転車で走りはじめてから1時間後にそう言った。先ほどの考えはフラグだったようだ。


俺は来た道を戻ろうと言う。死ぬかもしれないとは思ったが、これはあまりにも間抜けすぎる。
とりあえず、一旦帰って体勢を立て直す必要がある。

「いや、まだ行ける」

帰ろう。まだ行ける。

そのやり取りを3度ほど繰り返した。
俺たちはスマホの地図を頼りにしながらついに、とある川にたどり着いた。最後の方は砂利道で自転車をこげなかったので、自転車を押していた。空もすっかり暗くなっている。星がきれいだ。




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