summer1





「今からカイん家行くわ」

中学1年生の夏休み、突然電話が鳴った。そして、そう告げられた。
完全に断定形だった。断る余地などなく、結局俺の許可も得ずに拓也は俺の住んでいる家に来た。閑静な住宅街にある平凡な家。外から見ればどこにでもあるような普通の家だ。

でもその家は普通じゃなかった。その家には何もない、空っぽの家だった。両親は共働きで、家に居ることがほとんどない。まぁ、二人が揃ったところで夫婦の会話も、親子の会話も何もない。

いつ頃からか、それは俺のせいだと気がついた。俺は小さい頃からずっと一人でいた。その分手がかからなかった。かからな過ぎたのだ。

俺が親に興味を示さなければ、自然と親も俺に興味がなくなっていった。そして、俺の家族はみんな、バラバラになった。

拓也が家に来たときも、家の中にはほとんど何もなかった。俺の生活に必要最低限の物しかなく、殺風景で異様ともとれる家だった。
普通の人なら引くだろう。
それなのに、拓也は何も気にしなかった。友達と遊ぶようなものは何もない。だから俺たちはただ家の中で喋っていた。

「夏休みもう終わりかよ。マジで学校めんどくせー。」

学校がなければやることがなく暇なだけだと思うが。

「学校っていう場所がめんどくさいんだよな。」

ちょっと意味がわからない。

拓哉は何もない部屋のフローリングで寝っ転がりながら、ぶつくさと文句を言う。こいつが学校でしていることと言えば、寝ているか、食べるか、友達と話すかのどれかのくせに。
今していることと大して変わらない。

どうして、俺の家なのだろうか。こいつは俺と違ってたくさん仲間がいるはずなのに。

「カイん家って落ち着くわ。他のやつ喧嘩ばっかでメンドイ」

不良の世界も大変だ。こんなに暑い日まで喧嘩にいそしんでいるなんて。
その後も暫く何をするわけでもなく、ただ二人で並んでボーッとしていた。




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