summer8





翌朝、既にお巡りさんが起きていた。彼は俺が起きたことに気がつくと、おはようと言い、お茶を出してくれた。
俺は軽くお礼を言うと、お茶を一口飲んだ。
交番の中の時計を見ると、朝の8時を指していた。拓哉は隣でまだ寝ている。

何もすることがなく、大人しく座っていると、お巡りさんが携帯を手渡してきた。俺のものだ。渡した覚えはないのだが。

「二人の携帯、充電しておいたよ。黙ってするのは悪いとは思ったけれど、お願いする前に二人とも寝てしまったから」

とても気が利くお巡りさんだ。

「今時の子はスマホですぐに地図の検索ができるから、道に迷うとしたら充電切れかなと思って」

俺は軽くお辞儀をすると、スマホをポケットにしまった。
物音に気がついたのか、拓哉が目を覚ました。
すると、拓哉は何か慌てたように周りをキョロキョロと見回した。そして、俺と目が合うと安心したように、俺の頭に手を置いた。

「とりあえず、これでも食べなさい」

お巡りさんが手渡したのはコンビニのおにぎりだった。俺たちはお礼を言い、そのおにぎりを食べた。さっきからお礼ばかり言っているような気がする。
昨日の夜からほとんど何も食べていなかったため、俺たちはがっつくようにあっという間にそのおにぎりをたいらげた。

「このおにぎりいくらでしたか?」

拓哉がポケットから財布を取り出し、そう尋ねた。俺も拓哉にならい、財布を出す。

「いやいや、いいよそのくらい。」

だが、そういうわけにもいかないのだ。先程からお世話になりっぱなしで、せめてそのくらいは支払いたかった。

俺は強引にお巡りさんの手に500円玉をねじりこんだ。拓哉も同じようにした。

「分かった分かった。ありがとね」

お巡りさんが苦笑いしながら、そのお金を受け取った。
そして、一息ついた後、俺たちは交番を出た。

「本当に学校の先生とかに迎えに来てもらわなくても良いのか?」

「大丈夫っす。道はほぼ把握したし、スマホもあるんで。」

心配するお巡りさんに、拓哉が元気よく答えた。もうすっかり疲れは癒えているようだ。

「そうか。でも何かあったらすぐに電話するんだぞ。」

「はいっ。ありがとうございました」

俺たちは見送るお巡りさんに手を振りながら、自転車を走らせ始めた。




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