summer7





再び目を覚ましても、当然状況は変わっていなかった。1つ変わっていたことがあるとすれば、
俺が拓哉の膝の上で寝ていたということだった。
拓哉は俺の頭を優しく撫でていた。
ずっと起きていてくれたのだろう。

俺は、拓哉にお礼を言い、起き上がった。
公園の時計を見ると、9時を指していた。

電車が通りすぎる音だけが虚しく聞こえる。
拓哉は無言で俺の手を握った。少し痛いくらい握りしめた拓哉の手は、微かに震えていた。。
何も言わないが拓哉もきっと不安なのだろう。しかし、俺を不安にさせないために、必死に強がっているのかもしれない。
俺は大丈夫。
そう伝えるために、拓哉の手を強く握り返した。




30分ほど経った頃だろうか。

「君たち、ここで何をしているんだ。早く家に帰りなさい」

見廻り中だったのか、近所から通報があったのか、お巡りさんが来た。

拓哉は俺の手を離すと、お巡りさんの方へ歩いていった。
俺は座ったまま、二人の姿を見ていた。事情を説明しているのだろうか。蝉の声が喧しくよく聞こえない。

「とりあえず、署まで行こうか」

人当たりの良さそうなお巡りさんが、俺たちを先導した。俺と拓哉は無言で自転車を押して歩いた。

交番に到着した。既に夜の11時を過ぎていた。お巡りさんが用意したお茶を飲みながら、俺たちは詳しい話をする。

「君たちどこから来たの?」

「新座です」

「埼玉か。ずいぶん遠いところから来たね」

お巡りさんの話を聞くと、俺たちは今、東京の立川にいるらしい。線路沿いに来ていたら、別の方向に行ってしまったようだ。
お巡りさんに家の電話番号を告げる。
家に電話をかけて、親に迎えに来てもらうつもりだろうか。


10分ほどして、お巡りさんが奥から戻ってきた。
お巡りさんは複雑そうな顔をしながら、今度は学校の電話番号を聞いてきた。
それを告げると、再び奥へ戻っていった。

きっと親が出なかったか、迎えを拒否したのだろう。

今度はすぐに戻ってきた。その手には毛布があった。
この時間、学校にも人はいなかった。
だから、仕方かないが今日はここで寝て、明日家に帰るのだという。

俺たちはその言葉に甘えることにした。正直、疲れがピークに達していて、意識を保つことすら難しくなっていた。
俺たちは毛布を手渡されると、倒れるように眠りについた。




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