summer5
体を拭き、新しい服を着たところで、拓哉が戻ってきた。
拓哉が服を着ると、俺たちは朝食を取ることにした。昨日、コンビニで買っておいたパンだが。
川を眺めながら、二人でパンを食べる。昼ご飯や夜ご飯を一緒に食べることはよくあったが、朝に一緒というのは初めてだった。そもそも、朝ごはんを人と食べること事態が久しぶりだった。
「やっぱこういうところ良いよなぁ、大自然って感じでさ」
俺は静かにうなずいた。川の水が流れる音、木の葉を揺らす涼しい風、澄んだ空気の匂い、その全てが俺にとって新鮮だった。殺風景な部屋と、町の周辺だけが俺の世界だった。
「うっし、帰るかっ!」
拓也は勢いよく立ち上がると、俺に手を差しのべた。その手を借り、俺も立ち上がった。
初めて感じたこの場所の感覚に未練を残しつつ、二人で川をあとにした。
だが、来るときも道があやふやだった俺たちが、無事に帰ることができるのであろうか。
できないのである。
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