「好きだ」
真っ直ぐ俺を見つめる彼の目から、俺は今まで逃げていただけだったんだ。
世界は俺次第でどうにでも変わる。
異端は嫌われると最初から決めつけていた。
拒絶されるのが怖かったから、気づかないふりをしていた。
同じことを繰り返すのが嫌だったから、人を遠ざけていた。
目を背けていただけ。面倒だとか、取り繕って、格好つけたていた。弱い自分を守るために。
でも、俺を見つめる彼の目は、純粋な気持ちを伝える彼の声は、空っぽになった俺の心を満たしていく。
どんな相手を好きになったって、幸せそうに笑う二人。
そんな彼らに、暖かい言葉を送る周りの人々。
あの時とは何もかも違う。
恐る恐る俺は目の前の男の方を向いた。
「やっと、俺の目を見てくれた。」
そう言った彼の言葉は、俺の目を見つめる彼の目は、とても暖かかった。
俺はただ、この温もりが欲しかった。
もう逃げない。勇気を出して一歩踏み出さなければならない。
俺は、殻の中から見える一筋の光に手を伸ばした。
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