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オトモダチ



 いずれこうなることはみんな予期していた。だからといって子供相手にどう対処したら良いのか、その答えを出せていたわけじゃない。そして先にその時が来てしまった。

「ゆーた、だっこして?」

 両手を広げて見上げてくる心ちゃんは可愛い。可愛いし、普通に抱っこしてあげたいんだけど。

「えっと、」
「心、俺が抱っこしてやろうか?」

 すかさずパンダ君が横から割り込んできて心ちゃんに向かって手を広げる。普段その見た目からかパンダ君のことが大好きな心ちゃんだけど、いつでも事が上手く運ぶわけじゃないらしい。

「ううん、ゆーたがいいの」

 そうだよね、子供には気分があるよね。でもどうしよう。

「こんぶ!」

 今度は狗巻君がポケットから飴を取り出して気を引こうとするも、それすら気分じゃないのか「いらない」と一刀両断されてしまった。

「ゆーた、だっこ」

 二人のことは完全に無視してもう一度僕に視線を向けてくる心ちゃん。これはもういざとなったら瞬時に二人を頼って心ちゃんを引き剥がしてもらうしかないかな。
 三人で目配せをして小さく頷き合い、恐る恐る心ちゃんを抱え上げた。

 そう、心配していたのは里香ちゃんだ。心ちゃんの存在を里香ちゃんがどうとらえるか。何も起こらなければそれでいい。でももしも里香ちゃんが心ちゃんの存在を気に入らなかった場合何が起こるかわからない。
 心ちゃんは呪霊は見えるしらしいけど呪術が使えるわけでもないし、それ以前に子供だ。何かあればすぐに命の危機に直結しかねない。

「やっとだっこしてくれた!これで近くでお話しできるね」
「う、うん」
「ねー、りかちゃん」

 え……?
 心ちゃんが口にした言葉に僕もパンダ君や狗巻君も耳を疑う。今、里香ちゃんって言った?

「心ちゃん! 里香ちゃんが視えてるの?」
「うん。いつもいるよ、ここ」

 そう言って僕の顔のすぐ後ろを指差す。そしてそこに向かってニコニコと微笑んでいる。

「どういうことだろう……、僕だっていつも視えるわけじゃないのに」
「子供って純粋過ぎて大人じゃ視えないモノ視えるとか言うし、それか?」
「しゃけ」
「それって呪いでも言えることなのかな」

 何はともあれ里香ちゃんは心ちゃんの存在を悪くはとらえていないってことだよね。そのいい証拠にさっきから心ちゃんは会話をするように一人でしゃべり続けている。
 その姿を見てなぜか無性に嬉しくなってしまった。ずっと僕のそばにいることしかできない里香ちゃんに話相手ができたことが嬉しいんだ。
 そして同時にほんの少しだけ心ちゃんが羨ましいとも思った。

「心ちゃん、里香ちゃんと仲良くしてあげてね」
「うん!こころとりかちゃんはオトモダチだから」
「そっか。ありがとう」

 心ちゃんと同じように、里香ちゃんも笑ってくれてるといいな。