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それはちょっと困ります



 来てしまった……。
 絶望に打ちひしがれながらお手洗いから戻ると丁度乙骨くんが真希ちゃんに投げ飛ばされているところだった。かわいそうに、頑張れ。と心の中で思いながらも今の私もかわいそうだと自分自身で思ってしまうくらいにはお腹が痛い。
 どうして女の子ばっかりがこんな仕打ちを受けなきゃいけないんだろう。世の中不平等だ。この痛みだけで私は呪いを生み出してしまいやしないだろうか、なんて馬鹿なことを考えながらみんなから少し離れた所で小さく蹲りどうにかこうにか痛みを逃していた。
 

 ちゃんとみんなの姿を見ていられたのも数分で、その先は蹲ったまま完全に視線を落としブツブツと地面に向かって恨言のようなものを吐き散らかしていた。

「う〜、なんで毎月毎月こんなに痛いの……もういやだ、一生こなくていい」

 誰に向けるでもないし何の解決にもならないけど勝手に口から滑り落ちる言葉たちを「おかか」と柔らかな声に受け止められてパッと顔を持ち上げる。

「へ?」

 そこにはさっきまでパンダくんと組手をしていた棘くんがいて私と視線を合わせるように目の前にしゃがんでこっちを見ていた。痛みに支配されて気配にすら気づかなかったとは。

「ビックリしたあ」
「こんぶ?」
「うん、大丈夫……じゃないけど、だいじょーぶ」

 棘くんは私のこの毎月のツラさをよく理解してくれている。付き合ってそういう姿を見せることが増えてしまったのもあるけど、普段から周りの人の感情や状況の変化に聡いから隠すのは無理があった。
 それにしてもさっきの「おかか」に秘められたダメっていうのはどう言う意味だろう。

「棘くん、なんでさっきダメって言ったの?」

 単純な疑問でそう聞いたのに、いつも通り眠たげな優しい目の持ち主は、私から一切その視線を外すことなくとんでもないことを口にした。

「いくら、ツナマヨ?」

 来なくなったら、二人の子供作れなくなるよ?

「な、えっ、なに!?」

 語彙を失うってきっとこういうことだと思う。私もおにぎりの具で喋ってしまおうか。テンパる頭でそんなことを思いながら熱くなって仕方ない顔を両手で覆い隠せば棘くんの笑い声が聞こえてくる。
 すぐに私を揶揄うんだもん、悔しい。でもどうしよう凄く嬉しい。

「おいコラそこの二人、イチャつきタイムは終了だ。なまえはさっさと硝子さんとこで薬もらってこい、棘は次私の相手な!」
「しゃけ〜」

 真希ちゃんに返事を返しながら立ち上がった棘くんは最後に私の頭を優しく撫でてくれた。

「ありがとう棘くん」
「しゃけしゃけ」


 ああ、これはもう棘くんの為にも頑張って耐え抜くしかないなあ。そう小さく決心したのは私だけの秘密。