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宇宙との邂逅



※「その青を彩る君は」の夢主とはじめて出会った時のお話。





















除夜の鐘、それが響くのを聴きながら深い闇に覆われ星の一つすら見つけられない空を見上げる。
人には百八つの煩悩があると言われている。その煩悩を祓うために除夜の鐘をつく回数も百八。そんなことで煩悩とされるものが祓えるとは思わないが、そう思いその行為に向き合う人々の姿勢は悪いものでは無いと思う。ただ、それを単なるイベントとして群がる何も考えていないような人間はどうかと思うけど。

任務は完了しているしもう帰っても構わないのだけど、どうしても興味を引く案件が目の前に転がっていて私はそれを見守る様にここにいた。
あの六眼を持って生まれたという五条家の呪術師。それが丁度自分の任務地の少し外れで別の任務に就いていたのだ。
現在は自分と同じく高専に在学中らしいが、呪術師としての能力が飛び抜けていると頻繁にその名前は耳にしていた。別にそれをどうこう思いはしないけど、生まれた国が違う私にとってこの国の中でも御三家と言われ、更に生まれ持ったものに恵まれた彼の事はとても気になっていた。単純に“興味”という形で。それに、

「どれ程綺麗な眼なのか見てみたいし」

聞くところによるとその眼はとても美しいものらしい。私の映す危うい世界とはきっと違う。私の眼はそのものが呪いで、この眼に映してしまった対象の刻を一瞬の内に止めてしまう。
それでも私は母譲りのこの黄金色に輝く眼が好きだ。獰猛な爬虫類を思わせる奇異な眼だと周りには散々蔑まれてきたが、そういう侮蔑の言葉を吐くばかりの何の能もない人間の言葉なんて響かない。
だってどんな力だろうと使い方次第でそれを善いものへと変えられるのだから。

素肌を刺すような風を身に受けながら今まさに呪霊を祓い終えた彼の姿を見ていた。等級の高い呪霊を手際良くあっさりと祓い退けた彼。流石としかいいようがないな、そう思っていたところで眼下の彼がこちらに視線を送ってきた。

「あんた誰」
「気付いてたの?」
「気付くだろ、そんな視線送られれば」
「そう。はじめまして、五条悟くん」

タンッと地面に着地し一気に距離を詰める。言いながら彼のサングラスを押し上げると、その奥にあったのはまるで宇宙を閉じ込めたような美しい眼だった。

「おいっ!」
「へぇ、本当に綺麗だね」
「何なんだよ急に」

鬱陶しそうに私を払い退け、怪訝な顔をする彼を見て薄い笑みを送る。
鳴り響いていた除夜の鐘は煩悩の数を刻み終えたのかその音を止め、若干の静けさを取り戻したそこで小さな宇宙と鋭く視線が絡み合っていた。

「君に興味があるの。だから少しだけ観察させてくれないかな」
「はぁ?」

不機嫌そうな声が届いたけれどもう遅い。直後微動だにしなくなった彼の顔の輪郭をするりと指の腹でなぞる。呪力の巡りを止めれば本来の黄金色がそこに現れる。獲物を捉えた、そんな気持ちになるのは何も呪霊相手にこの力を使う時だけじゃないのだと思い出しながら、今度はそのサングラスを取り払って至近距離で宇宙色の美しいそれを覗き込んだ。

「一体この眼は私をどんな風に映すのか、興味深いなあ」

出会ってしまえば止まらない、止めるつもりもない。今年は面白くて良い年になりそうだ。そう思いクスりと笑う自分が珍しくておかしかった。