×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -


通学@




バスに乗って数分、私はクロの制服を引っ張った。


「クロ」
「ん?」
「寒い」


夏も終盤に差し掛かって朝晩は冷え込む日も増えて来た。そんな日の、未だ冷房が稼働しているバスや電車は肉付きの悪い私にはダイレクトに堪える。


「だから上羽織って来いって言ってんだろ」
「だって昼間はまだ暑いんだもん」
「鞄に入れて来いよ」
「私の鞄クロのみたいに大きくないから入らないよ」


あれこれ言いながらもエナメルバッグからバレー部の真っ赤なジャージを取り出して「これ着とけ」とそれを渡してくれるクロの優しさに私はいつも甘えてしまう。羽織ったジャージは私にはかなり大きくて、ぶかぶかの袖をなんとか掌の位置まで捲るけど着丈はスカートがギリギリ見えるくらいだ。


「あったかい」


ジャージを着た上からスクールバッグを掛け直して袖口で顔を包めば、頭上から降りてくる冷気を遮断出来て頬が徐々に温かくなってくる。


「お前この時期よく風邪引くんだから気を付けろよ」


まるでお母さんみたいなクロのお小言を「うん」と言って聞き流した。


·


目的地のバス停で下車すると、私達の後ろからお婆ちゃんが下車しようとしているのに気づいて、段差のある地面に足を降ろす為バスの手すりを掴むお婆ちゃんに自分の手を差し出した。


「良かったら掴まってください」


お婆ちゃんは差し出した私の手を取ってくれて下車した。


「ありがとう」
「いいえ」


可愛いお婆ちゃんの笑顔に私も笑顔を返す。


「なら、今度はそっちのかっこいい彼と手を繋いであげないとねぇ」
「え?」


お婆ちゃんの視線の先には私の隣に立つクロが居て「若くていいねぇ」と、ころころ笑いながら手を振って私達とは逆方向に歩いて行ってしまった


「ねぇクロ」
「なんだよ」
「クロって私の彼氏なの?」
「そう見えたって話だろ」
「…ほう」
「行くぞ遅刻する」


先に歩き出したクロの背中を見ながら、傍目にはそう見えるんだな、なんて思った。


「手、繋ぐ?」
「はぁ?」
「昔はよく繋いでくれたのに」
「なーに、名前ちゃんは俺と手繋ぎたいの?」


言葉と一緒にニヤニヤしたいつもの憎たらしい笑顔が降って来たから「繋ぎたいよ?」と笑顔で答えればクロは驚いた様に目を真ん丸くさせた。なんかしてやったりな気分だ。


「あはは、クロ本気にしてるー」
「お前、」


今日も私達の通学時間は平和です。