present for you
GW合宿を終え今日のところは東京駅で解散となり、土産屋に寄ると言う研磨を待ってから共に帰路へ着いた。
「何買ったんだ?」
「名前に」
「研磨、ここ東京だぞ」
「分かってる。でも名前これ好きだし」
わざわざ宮城まで行っといて土産買うのが東京って…。まああいつの事だし研磨が買ってったものなら何でも喜ぶか。
「クロは?」
「あー、いいんだよ俺は」
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「クロー!研磨ー!」
研磨の家から一番近い公園の前で聞き慣れた声が俺たちの名前を呼んだ。
「名前だ」
待ってる間遊び相手をしていたらしい小学生くらいの子供たちに手を振ってこっちへ走ってくる。どっちが遊び相手してもらってたかはわかんねぇけど。
「二人共おかえり」
「おう」
「…ただいま」
研磨の横に並んで歩きながら「疲れた?いっぱい勝った?」と研磨を質問攻めにしているこいつとは研磨と同じでガキの頃からの付き合い。言わば幼馴染ってやつだ。
「勝ったけど疲れた」
「今回は楽しかった?」
別に何の嫌味でもなく笑顔でそう訊ねる名前に、研磨は少し視線を逸らして「…普通」と答える。
「本日2回目だなその質問」
「え?私意外に研磨にこんなこと聞く人いるの?」
驚いた様子で俺を見る名前に「新しく出来た友達からも聞かれたよなー、研磨」と言えば、研磨は何とも形容し難い表情で俺を見た。
「と、友達!?研磨新しい友達出来たの?どんな子、男の子?もしかして女の子!?」
「名前うるさい」
「男に決まってんだろ。烏野の1年だよ」
「?、烏野って出発前に言ってた昔の因縁の相手、的なとこの?」
「そうだ」
それを聞くと名前は「初対面の子と友達になるなんて…」と驚きと疑いの目で研磨を見ている。
「その話もういいよ。これあげるから黙って」
研磨はそう言って手に持っていた土産の袋を名前に渡す。
「わぁ、お土産?ありがとう」
だが受け取った袋の中を見た名前はきょとんとした表情で研磨に視線を戻した。
「ねぇ研磨」
「?」
「これ東京土産になってるよ?渡すの私であってる?」
ことりと首を傾げて研磨を見る名前の手には銘菓、東京ばなな。
「でも名前それ好きでしょ。名前が好きなのが良いかなって思ったんだけど…他のが良かった?」
研磨の言葉に名前はブンブンと首を左右に振って、そんなことない、嬉しい!と笑顔を見せた。
「研磨が私の好きなの覚えててくれたたけで嬉しい」
嘘偽り無い満面の笑みを向ける名前にほんの少し照れた表情を見せた研磨は「良かった」と小さく呟いた。
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「じゃあ学校でね研磨」
「…バイバイ」
研磨とは自宅の前で別れこっからは名前と二人。
「クロもお疲れ様。遠征自体もだけど主将は大変だったでしょう?」
「まーな。いろいろあるけど何より山本が相変わらずうるせぇ」
「あははっ。そんなに?ああいうところが虎くんの可愛いところじゃん」
「朝から晩まで一緒にいると疲れるってもんじゃねーんだよ」
「そういうものなの?」と言う問いに「そういうもんだ」と返すくらいのタイミングで名前の家と俺の家との分かれ道が近づいて来た。
「今日はここで大丈夫だよ、まだ明るいし。いつもありがとねクロ」
「おう」
こうして暫く会えなかった時は何も用事が無いくせに俺たちに会いに来る名前。良い歳して寂しがり屋だからな。
「名前」
手を振って背を向けかけた名前の名前を呼びポケットから小さな袋を取り出してそれを放物線を描く様にフワッと放った。
「わっ、びっくりした〜」
「おーナイツキャッチ!じゃーな」
そう言って今度はこっちが背中を向ける。少しして「クロありがとー!」と嬉しそうな声がして、片手だけ振っておいた。
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風呂に入って部屋に戻ると、携帯にメールの受信を示すランプがついていた。開いてみれば送信者は研磨。
【やっぱりちゃんと買ってるじゃん】
「…あの馬鹿」
研磨からのメールにはご丁寧に添付データが付いていて、開けばそれは俺の渡した土産を持って嬉しそうにピースサインをする名前の姿が写っていた。
「すぐ研磨に報告する癖やめさせねぇとだな」
心の底からそう思った夜だった。