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たまには俺も



バレー部に入って初めて苗字さんに会った時、俺はてっきりクロさんか研磨さんどちらかの彼女なんだと思っていた。でも蓋を開ければそうじゃなくて、三人は幼馴染なんだと知る。
それなら別に俺が仲良くしたって何の問題もないだろうし、苗字さん自体も俺と仲良くしてくれているから良いよね。そう思っていたけど現実は違った。
幼馴染ってだけなのにあんまり表に出さないように見えてクロさんも研磨さんも苗字さんの事となると周りへのガードが厳しい。
絶対にあれはいろんな意味で特別視している。

「苗字さーん!」
「どうしたのリエーフ君」
「今日この後何か用事ありますか?」
「今日はバイトも休みだし特に無いよ。だから部活見に来てるしね」
「!、じゃあこの後俺と、」
「リエーフ、残念だったな。今日名前は俺と用事がある」
「?、なんかあったっけ」
「なに、お前忘れたの?」
「……ごめん、ほんと何だった?」
「えー本当に何かあるんですか?」

突然割って入って来たクロさんに唇を尖らせて言えば、ギロリと鋭い視線を投げられて、ビクッと背筋を電流が走る感覚を味わう。

「名前と遊ぶ暇あったらもっと練習しよーなリエーフ」
「れ、練習はちゃんとしてるじゃないですか!たまには俺だって苗字さんともっと話したりどっか行ったりしたいんです!」
「お前、名前を何だと思ってんだ」

呆れた表情で苗字さんの前にしゃがみ込んでいた俺を見るクロさんから視線を逸らして言う。

「うーん、今はまだ仲のいい先輩と後輩?」
「……」
「“今はまだ” ってなに?」

少し離れた位置で気にしないといった顔をして休憩していた研磨さんが突然話に入って来た。

「え、いやだってこれから何がどうなるかなんて分からないじゃないですか」
「ほお……」
「リエーフ、それどういう意味?」

ふらりと立ち上がった研磨さんはゆっくりこっちへ歩いてくるし、クロさんの表情は笑顔だけど目の奥が全く笑っていない。

「リエーフのやつ本当素直だな、バカが付くほど」
「黒尾と研磨もある意味素直だけどね」

ほら、ほんの少し本音で話しただけでこんなにも牽制してくる。でも俺だって本当に苗字さんともっと仲良くなりたいと思ってるし、たまには……

「もう、クロも研磨もリエーフ君が困ってるじゃん」
「苗字さん、」
「…だって」
「お前なぁリエーフに懐かれたら面倒だぞ」
「私は嬉しいから構いません。リエーフ君ごめんね」

研磨さんにはさすがになかったけど、クロさんに少し凄んで見せた苗字さんはそう言って俺に笑顔を向けてくれた。

「じゃあ、」
「うん、いいよ。今度デートしよっか」
「「!」」
「良いんですか?」
「勿論。毎日部活だろうからあんまり時間取れないかもしれないけど行きたいところがあったら教えてね」
「はい!」
「ちょっと、名前」
「ん?」

俺と苗字さんの会話を聞いて一瞬驚きの表情を見せたクロさん、そして今俺たちのすぐ傍まで来た研磨さんは不機嫌さを隠すこともなく俺を睨んで名前さんに視線を移した。

「……」
「練習するぞ。夜久、リエーフ頼む」
「おう、任せとけ(ヤキモチ妬きの黒尾くん)」
「っえぇぇぇえええ!!」
「なんだリエーフ、文句あんのか?」
「な、無いです、けど……」
「今回のは自分で撒いた種だからな」
「なんスかそれぇ!!」

まあ苗字さんとデートの約束出来たからいっか。……って、今俺の身が保たないかもしれないけど。



「名前、」
「ん?さっきからどうしたの研磨」
「……あんまり“デート”とか言っちゃダメだよ。リエーフすぐ勘違いするから」
「なに、研磨ヤキモチ? 研磨もデートしたいの?」
「違うし。って言うか名前の言うデートならいつもしてるじゃん」
「ふふ、そうだね」

研磨さんは苗字さんと何か話してコートに戻って来た。

「リエーフ」
「はい?」
「名前に変なことしたら二度とトス上げないから…」
「ええっ!?」

多分、クロさんよりも研磨さんの方が本当の意味で厄介なのかもしれない……。
先輩の幼馴染と仲を深めるという事が如何に難しい事かを痛感した日だった。