何故。
何故人はやってはいけない事程やりたくなってしまうのか。
ダメと分かっていても、衝動が沸くのか。
これは、人間の永遠の謎だと、私は考える。
目の前には可愛い寝顔を見せるペトラ。
そして書類を片したばかりの私の右手には、ペン。しかも油性の極太。
必然性すら感じるこの状況。
いかん。
これはいかん。
ごくり、と喉がなった。
…時には、事は成された後だった。
「お、おぉぅっ…」
ペトラの鼻の下には、さっきまでなかった筈のホクロが。
否、これはホクロではなく、私の茶目っ気だ。
…落書きだ。
「無意識とは恐ろしい…」
ぽつりと呟いた言葉は自分で言うのもなんだが、他人事だ。
だがしかし。
完全に誘惑に負けた今、私の頭はひどくクリアだった。
そうだ、冷静であれ、私!
「…殺される」
そして冷静になった頭が弾き出した答えに、クリアどころか真っ白になった。
やばいやばいやばい。
これは「もーそれなら仕方がないなぁ」的な感じで、正当な理由を作らなければ、ペトラに削がれてしまう。
今更押し寄せる後悔の波。
だが、しかし。
これでも私だってたくさんの死線をくぐり抜けた、屈強な兵士なのだ。
そうだ。リヴァイ兵長に指名されるくらいのエリートなんだ。私が馬鹿だと罵られることがあれば、それはリヴァイ兵長のバーカチービと言うのと同じことなんだ、うん。
そう、私はエリート。
この死線をもくぐり抜けてやる。
「よし」
そして意気込んで、
点を太くしてみた。
「よりホクロらしくすれば…」
そしたら、気付かない気がする!
むしろばれても、「可愛い可愛いペトラにセクシーな雰囲気をつけてあげようと思って」とか言えば「そうだったのありがとう」となるかもしれない。あれ?でもそれって口元だっけ?
いずれにせよ、ホクロを精製するのが今専念すべきミッションだ。
そして、ペトラを起こさないように、ソフトタッチでホクロらしさを追求するものの、
「あれ…ちょっ、うぁぁ、………あ」
どうしてこうなった。
直径5cmくらいの巨大ホクロが出現した。
「…セ、セクシ〜」
ひゅーひゅーと一人囃し立てる。
…無理だ。
どう見たってセクシーとは掛け離れた、アホだ。
「………」
私はエリート。
だってリヴァイ兵長がそう思ってるから。(多分)
だから、
「私の任務失敗の責任はリヴァイ兵長にあるのだ」
私はふっとニヒルに笑い、颯爽と部屋を去った。
眠るルームメイトの顔に落書き
そう、私は暇人エリート!
→clap(続き)
お題ウィジー様