「なァ、」
「んー?」


柔らかい風が吹く。
ほんの少し冷たい風は、降り注ぐ陽光で熱くなった頬には調度良くて。


「なんか、こういうのも良いな」
「そーだね」


目の前では楽しそうにはしゃぐ子供達が駆けていて。
けれど私達が座る公園の片隅のベンチは、二人の世界のようにまったりと穏やかで。



「俺ら、周りから見たら恋人に見えんじゃね?」
「あはは、そーかも」



肩を揺らせば、触れそうな程近くに銀さんがいて。
二人の距離は10cmくらいしかなくて。



「…」
「…」



何となく、膝に置いていた手を横に下ろした。
ひんやりとしたベンチの温度が気持ち良く伝わる。



「…そういや、お前、好きな男とかいんの?」
「いるよー」



視界の下で、銀さんも同じように手を横に置いたのが分かった。

あ、小指が触れそう。



「銀さんこそ、好きな子いるの?」
「おー、いるいる」



少しでも動かせば、触れあいそうな距離のまま。
けれどお互い動くことはなくて。



「…誰?」
「銀さんこそ、誰?」



お前が先に言えよ、なんて声がして。
銀さんから言ってよなんて返事して。

けれど、意識も感覚も、下ろした手に、小指に集中していて。




「…まァ、誰か知ってるけどな」
「私も知ってるけどね」





じりじりと小指を動かせば、その大きな小指に捕まった。









気付いてた

意地っ張りな二人が折れるまで、あと5秒。










clap?









(2012/6/7)


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