ちらりと見遣ったコイツは、ただただブラウン管に映り込む瓦解した町の悲惨な風景を凝視していた。

その大きな瞳に涙を浮かべて。




「こんなになっちゃうなんて…」




噛み締めた唇を震わせて。
絞りだした声は掠れていた。




「ここの人たちは、ここは、どうなっちゃうんだろう」




見据えた視線はそのままに、ついには大粒の涙を一つ、二つと零してしまった。
そっとその頭を引き寄せて、抱きしめる。
すっぽり収まるその体は相変わらず小さい。





「お前が泣いてどうするんですかァー?」

「だって…」





尚もぐすぐすと洟を啜るコイツを宥めるように背中をさする。





「一瞬でこんな事になっちゃって、たくさんの人が苦しんでるんだよ」

「…」




想い涙するその小さな身体が小刻みに震えて。
無力さに打ちひしがれているようで。




「先が見えないってのは怖ぇもんだよな」
「うん…」




人は、見える明日を求めて生きるもんだから。


けど。




「だからこそ…」

「…銀ちゃん?」







「信じるんだよ」







明日はあると。
暗くて見えなくとも先が長いだけ。

人はそんな弱っちい生き物でもねェから。

がむしゃらに前を見据えりゃ泥まみれになろうとも真っ直ぐ立ってられるもんだから。





「信じる…」
「そーそー」





ぽそりと呟いたその声は、もう泣いていなかった。





「信じて、一生懸命向き合えばきっとまた立ち上げれるよね?」

「おー。きっと今まで以上に強く逞しく復興するに違いねェ」





見上げてくる瞳は揺れることなく真っ直ぐで。
その声は確かに力を宿していて。








信じる気持ちを力に代える、その強さこそが大事なもんなんじゃねェかなんて。












信じる
(さぁ、そろそろ顔をあげよう)












(2010/2/1)






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