*単行本・文庫本3巻で八雲が真琴さんのことを名前呼びしていたものより派生した3K。













いつものようにやって来て、
いつもの定位置に座る。

いつからか『いつも』になったこの光景。



「なんで私は君なの?」
「何なんだいきなり」



君は拗ねたように口を開いた。



「よく考えたら、真琴さんのことは名前じゃない」
「そりゃあ真琴さんは君と違って美人だし、きちんと礼節弁える大人だからな」
「…で?」
「僕だって敬意を払うさ」
「何よそれー!」
「そのままの意味だ」
「美人は今更どうしようもないとして、私だってもう大人ですー!」



そんな膨れっ面してよく言うよ。



「だいたい八雲くんだって同い年じゃないっ」
「君の場合は精神年齢が実年齢に追いついていないんだ」
「…ねぇ」
「なんだ」
「失礼だと思わないの?」
「いつも言うが、思ってたら言わない」



途端に君はがっくりと肩を落とし、ふて腐れたような顔をする。



「は〜。八雲君のせいで何だか疲れた」
「それは僕の方だ」
「どうせ、私みたいな子供の相手をするのは疲れるとか言うんでしょ」
「よく分かってるじゃないか」
「はいはい!」



いーっと歯を見せる姿がより一層幼く見せて。
君は全く気付かないんだろうな。



「ほんと、いつもバカにするんだから!」
「そうさせるようなことをする君が悪い」
「あーあーそうですか!」
「毎度毎度、拾わなくていいトラブルを拾ってきては僕に泣きつくのは誰だ?」
「…っう」
「僕は保護者じゃないんだ」




本当は、君の頼る相手が僕であることが嬉しいだなんて、口が裂けても言えないけれど。




「それに関しては…ごめん」
「…何だ、気持ち悪い」
「別に私だって、八雲くんに迷惑かけたくはないもん」
「…」さっきまでの威勢はどこへやら。
今度は途端にしょんぼりとして。

忙しいやつ。


こんな風になったコイツの考えつく先は分かってる。





「そうだね、ちょっと最近八雲君に甘えすぎてたかも」

「は〜」




ほら、予想通り。


胸で小さくガッツポーズをつくり、私ももっとしっかりしなきゃいけないよね!
そう笑顔を作りこむ。



分かってる。


僕にトラブルを持ち込むことを躊躇するのだって、僕のこの左眼を利用したくない、そう思っているからこそだということも。
この眼など関係なしに、君が側にいてくれるのだということも。


ドジで泣き虫でお節介な君は、優しい。






「君の場合はそういう意気込みをすればするほど空回る」
「なっ!」
「もしくは、暴発」
「ちょっとそれは言い過ぎよ!」
「過去それで良い風に転んだことがない」
「それは、そうかもしれないけど…」
「だから、」
「…?」
「僕くらいしか君の保護者代わりは務まらないんだ」
「え?」
「おとなしく僕を頼ればいいんだよ」




ぼそりと口をついた言葉にだんだん後悔する。


依然反応は返ってこなくて、正面に座る君をちらりと盗み見た。






「…何、笑ってるんだ」

「だって、嬉しくて」





そう言って顔を上げた君は、いつだって僕を救うあの満面の笑顔で。


それが見れただけで、照れ臭さなんか気にならなくて。
なんだかこっちまで笑いたくなる。








「…泣いたり怒ったり笑ったり、子供みたいに大忙しだな」

「一言余計なんだから!」









どうにも君の前だと僕の心も目まぐるしい。



















そう、世界が色付くんだ。
君の居るその世界を、いつまでも見ていたいとすら思う。








「あ!また名前のことはぐらかされた!」

「(…単純)」











clap?




‐‐‐‐‐‐
3巻で八雲が普通に真琴さんって呼んでいるのをみて、
晴香がそこにヤキモチをやいたらどんなだろう。と思いいたったことから出来たお話。
ようするに『君』呼び最高!(ぇ(2011/2/24)






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