「んぎゃぁぁああ!」
「…朝っぱらから騒ぐな、うるせぇ」
「いやいやいや、リヴァイ起きてよ!」
シャッとカーテンを開き、太陽の高さに血の気が引いて叫べば、隣からご機嫌宜しくないリヴァイの声が聞こえた。
これが騒がずに居られるか。
もう完全に寝坊だよ。
しかも二人仲良く。
「ねぇ起きてってば!」
「…あと5分」
「ちょ、はーなーしーてーっ!」
「いいから黙って枕になってろ」
「なるか!」
それでも低血圧なこの人類最強は、私を道連れに寝直そうとする始末。
まるで甘えるようにすりすりと可愛く身を寄せてくるから性質が悪い。
いかん、
流されちゃいかんぞ。
「士気に関わったらまずいからって、私達の関係隠してるのに、二人して寝坊なんて怪し過ぎるでしょ!」
「…愚図なお前が俺に説教くらってたって事にすりゃあいいだろ」
「何その不名誉!」
なんて奴だ。
ただでさえ、私はリヴァイに(悪い意味で)目をつけられてる、なんて皆に思われているのに。
これ以上の汚名を着てなるものか。
よし、そうだ。
「じゃぁ、お腹壊したリヴァイを看病してたってことにしよう」
「起きるぞ」
このヤロウ!
「あっ!こんな所にキスマークつけて!」
「上着着てりゃ見えねぇだろ」
「暑くなっても脱げないじゃない!」
「脱がなきゃいい」
あーもう。
二人してせかせかと着替えていれば、あちこちに散らばった赤い印に気づいた。
やたらと印をつけたがるリヴァイには困ったものだが、その実、自分のものだと言われているようで嬉しいのはここだけの話だ。(だって言ったら遠慮なしにつけまくるに決まってる)
しかし今は言い争う時間も惜しい。
当面は暑くても頑張るしかないと諦め、かっちりとした上着を羽織った。
「よし!準備オッケー!」
「…オイ、それのどこがだ。襟歪んでんぞ」
「え、どこ?」
「こっち来い」
「ん、どーも」
リヴァイにされるがままに正してもらう。
ちらりと見たリヴァイは、私が指摘するまでもなく完璧。
ちょっとつまらん。
スカーフ曲がってるわよ、とか言ってみたい。
なんて思っていれば、整ったらしくリヴァイが離れて行く。
うん、つまらん。
「別々に出る?」
「どうせ、全員もう外に出てんだ。一緒に出たって見られやしねぇ」
リヴァイはそう言うと、ガチャリと扉を開けた。
つまり、それは一緒に出るぞ、という事で。
ちょっとでも長く一緒にいられることが嬉しくて、私はリヴァイに「りょーかい」と笑いかけ、鼻唄混じりに後に続いた。
「アイリ」
「う、?…っん!」
そうして、えへへ、なんて笑っていれば、急に名前を呼ばれて。
顔を上げれば、途端リヴァイに唇を塞がれた。
下唇を軽く啄まれて、軽いリップ音までさせて。
「な、なななっ!?」
「てめぇが悪い」
「何が!?」
唇が離れると同時に、リヴァイの予期せぬ行動にカァっと顔が熱くなって勢い良く後ずさる。
もう部屋を出た外だと言うのに何てことを!
しかしリヴァイはしれっと余裕顔。
何にも悪いと思っちゃいない顔だ、これ。
「…馬鹿」
「喜んでるてめぇも馬鹿だ」
じろりと恨めしく睨むも、痛い所をつかれて。
「人に見つかってバレたらどうすんのよ」
「やりやすくなるな」
「ならないよ!」
バサリ、
恥ずかしさをごまかすようにそんな言い合いをしていれば、ふいにバサリと背後から音がした。
ん?ばさり?
「あ」
振り返ってみれば、エレンが立っていた。
口をぽかんと開けて。
「み、見てませんから、俺!」
そしてこちらが何かを言う前にエレンは顔を真っ赤に染め上げ、落とした上着を拾いそのまま脱兎の如く逃げ出した。
見てませんから、って、確実に見たよね。
残された私とリヴァイに沈黙が落ちる。
「…エレン、多分リヴァイの事起こしに来たんだよね」
「だろうな」
「なら、遣いに寄越した上官がいるはずで、そして報告義務がある訳だよね」
「まぁそうなるな」
「リヴァイ…、バレたね」
「そうだな」
そうだな、って。
「うああああん!リヴァイのせいだよー!!」
「うるせぇ、見られちまったんだから腹括れ」
そしてリヴァイは私の襟首を掴み、引きずるように歩き始めた。
これからの事を考え(質問責めとか好奇の目とか)気が遠くなる私と裏腹に、リヴァイは何処か晴れ晴れとした声だった。
そう、恋人です
こうなったら仕方がない。
胸張って開き直って言ってやろう。
(↓おまけ)
「…リヴァイ、もしかしてエレンいるの気付いてた?」
「それがどうした」
「どうしたって…!」
「元々規則に背いてた訳じゃねぇ」
「そうだけど、」
「これでコソコソする必要もねぇじゃねぇか」
そう言ってリヴァイは襟首から手を離し、私の手を取った。
「〜っ!」
ああ、先が思いやられる。
clap?
(2012/6/1)
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