小説 | ナノ
例えば、眩しい朝日がカーテンから差し込んだ時。
今日もいい天気だね。
そんな嬉しそうな声で起きぬけに笑う姿だとか。
例えば、質素な食事を前にした時。
おいしいね。
そう幸せそうに頬張る姿だとか。
例えば、うとうとと温かなまどろみに沈む時。
おやすみ、素敵な夢を見てね。
愛おしむように慈しむようにかけられる声だとか。
日常の至る所に、その声や、姿がいて。
何を見ても、何をしてても、すぐ傍に感じられて。
あいつが好きだったもの、嫌いだったもの、笑っていたこと、泣いていたこと、その時の会話も匂いも温もりも全部全部鮮明なままで。
『リヴァイ』
そう呼ぶあの声は、消えることなく、木魂して。
なぁ、アイリ。
なんでさよならと一緒に忘れ方を教えてくれなかったんだ。
細胞の一つ一つが覚えてる
(あの日の紅ですら)
clap?
(2012/7/8)
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