trash



屑だ。

いやはやボキャブラリーの乏しさには泣いたよ
泣いたし心底呆れ返った
しかし屑なんだ本当に

まるで掃き掃除をして集めたごみくずをちりとりで取ろうとしたが失敗してちりとりの下に入っていってしまった、そしてもう一度ちりとりに入れようと試みるのも面倒くさいのでホウキで散らして存在自体抹消されてしまった取りようによってはひどく哀れな黒い粒達のような

ガスコンロ横の壁の角に溜まって手が届かず長年放置されてこびりつき、これは最初からあったもの若しくは時を経てそれに従いまっとうな劣化を続けてきた結果であり最早空間の一部と化しているのだからと取り除くことをすっかり諦められてしまったずっと昔の油汚れのような

ぼくはそんなどうしようもない屑なんだ諦められた油汚れなんだ
母のこじつけにすらならないあの笑顔を見たか
お前は醜悪な人間という生き物の汚い部分の寄せ集めより下等で、しかも周囲に対して今部屋の隅をふらふら飛んでいる腹を真っ赤に膨れ上がらせた一匹の蚊ほどの影響力も持たない見紛うことない屑だ。悔しかったら伝染病のひとつでも広めてみやがれと脳内でひたすらにぼくを呪い続けているにもかかわらず浮かべられた笑顔だ

ぼくは非常に腹立たしい気分になったが思えば母にそんな顔をさせたのは他の誰でもないぼくであって、思考がそこまでたどり着くと腹立たしい気持ちなど風にふかれた塵のように呆気なく消えてなくなり代わりに情けなくて情けなくて恥ずかしくなった
あの優しい母を自分が腹をいためて産んだ息子に向かってあんな毒を塗った刃物の切っ先に似た笑顔を向けるような屑女に進化いや退化させたのはぼくだ

なんという失態

しかしそれだけ自分を責め貶しても足は動かない
食い散らかした添加物にまみれた弁当の残骸が転がるそこを踏みわけて進むことをぼくの足は頑なに拒んでいる、理由は汚いからじゃない
ぼくが屑だからだ

いや違う

部屋から出られないから屑に成り下がったのか?

それともやはり屑だから出られないのか?

わからなくなってしまった

はじめがどちらだったのか

そもそもぼくはいつから屑になったのだろう
なぜなにがげんいんで

屑に

わからないから出られないのだろうか
わからないから屑なのだろうか
わからないから出られないから屑から出られないからわからないのだろうか

だからぼくはいつまでたっても、



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