有本くんは相方想い



片桐がその言葉に答えることなく黙って睨み付けると、男は彼の脇腹に手加減のない蹴りを入れた。自由のきかない身体ではそれを防ぐことはおろか受け身をとることすら敵わず、片桐は冷たい床に強く叩きつけられた。
もう数度目の出来事だった。

「なんだその目は」

男はもう一度、低く重い声で言葉を繰り返す。暗い地下全体にただひとつの音が反響した。

「なんだ、と聞いている!!」
「…あんたの声ってバターみてえな響き方すんだな」
「ああ?」

効果音をつけるとしたら、『にやり』

腕を拘束されて男の革靴の先に転がる片桐は、叩き潰された左足から流れる血液が背中まで濡らすのもそのままに、不規則な呼吸の中で妙に彼らしい笑みを浮かべた。

「オレっていつもふらふらしてるからさ、あんたらもあんたらの敵だって奴らも裏切っちゃったじゃん?」
「…解っているなら、」
「だけどねえ、一人だけいつもオレを信じてる奴がいんの。すっげー怖い顔して、そこに」

片桐が顎で僅かに示した先を男が見ることはなかった。



「いやあ、呼人クンまじ助かっ…げふっ!!」
「貴様は!!一体!!何を考えている!?」
「ちょっいたい、いたたアバラいたいって!揺すんないで!ばか!」
「馬鹿は貴様だあぁぁぁぁぁぁぁ!!俺がどれだけ心配したと思って…ゆるさん殺す!!死んでも殺す!!」
「ぎゃぁぁむり!!やだあやめてえーーー!!」



宜しくない組織の上の人に連れていかれた相方を、必死に車とばして助けにきた呼人。



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