夏の八束と呼人2



目に痛い黄色をした自動車が、太陽の光をこれでもかと照り返しながら海岸沿いの道にやってきた。

呼人が舗装されていない砂利道に無理やりねじ込むように駐車すると、後部座席でそわそわしていた八束はエンジンが止まるより先に飛び出していく。
これでも彼にしてはよく我慢が続いたほうだ、と呼人は思った。

「すげー、すげーよ呼人」

後から追いついてきた呼人に、八束は興奮した様子で言った。
砂浜に不釣り合いな長いズボンの裾が、砂に汚れないようにという理由から少しだけ折り曲げられている。

「ああ、すごいな」

そういえば今までこいつと海に来たことなんて無かったし、まず行こうと思うことすらなかったなと自分の行動に驚きつつ、呼人が眩しそうな顔で答えた。

「女の子いっぱいいる!すげー!!」
「…そっちか」
「な、向こう行ってみようぜ」

八束は呼人の呆れたようなツッコミをとても自然に無視し、彼の手を取って歩きだす。
呼人は一瞬身体を強ばらせた後複雑そうな表情で大人しくされるがままにしていたが、周囲の視線を感じて慌てて振りほどいた。

「あ、アレ超楽しそう」

ビーチバレーで盛り上がっている女性達の方を指差し、八束が子供っぽく笑う。

「ねえねえ、オレ達もいれてー!」

呼人はその声のかけ方はどうなんだろうかと思ったが、女性達は至って軽い調子で口々に「いーよー」と言って笑ってみせた。
信じられないというようにポカンとしている相方をよそに、八束が嬉しそうにお礼を言う。

「…最近の女性というのは、こういう…」
「ん?なに呼人クン」
「…いや、」
「…OKしてくれそうな子を選んだからだよ」
「……………」

呼人が酷い目眩を覚えたのは、おそらく日射病の為ではない。




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