朝見た夢の話
俺は何かのミッションで、仲間と共に敵の本拠地である巨大ビルに潜入していた。
見事目的であったなんかよくわからない凄そうな機械を奪回した俺たちは、時間を合わせて屋上に集合し、そこからヘリコプターで脱出することになる。
しかしおとりを引き受けていた俺は集合時間に間に合わず、屋上にたどり着いた時既にヘリコプターの姿は無かった。
だが俺は慌てることなく、ポケットから携帯電話ほどの大きさの機械を取り出した。
実は間に合わなかった時のため、あらかじめ仲間からこの小型の機械を預かっていたのだ。
「もしも間に合わなかった場合は、この機械のボタンを押してくれ」
最後に聞いた、機械を投げ渡した仲間の言葉が蘇る。
俺は機械を握りしめ、左手の親指で無機質なボタンを押し込んだ。
すると機械はみるみるうちに変形していき、なんと
「た、タケ○プター…?」
…のような形になった。
どこからどう見ても鉄製のタケ○プターだ。ドラえ○んが使っているアレだ。
頭に付けてくれと言わんばかりに、プロペラ部分をせわしく回転させている。
仲間よ、これは…
これで、タケ○プターで脱出しろと。
そういうことなのか?
俺は流石に怯んだ。
ここまでシリアスな展開だったはずなのに、まさかここでこんなアイテムを出されようとは。
タケ○プターで空を飛んだりしたら、世界観ぶち壊しで今までのミッションの中で散っていった仲間たちに申し訳ない気がする。ギャグに持ち込んでいい状況じゃない気がする。
しかし俺はこんな所で死ぬわけにはいかない。迷っている場合ではないのだ。
意を決して、俺はタケ○プターを頭に乗せた。
…だが飛ばない。
全然、全く、浮き上がりすらしない。
これはどういうことなんだ。使用法が間違っているのか?
俺は焦り、必死にタケ○プターを頭に押し付けた。
しかし結果は変わらない。
急激に体温が低下し、全身から汗が吹き出てくるのを感じた。
「くそ、何故だ!!何故飛ばない!?」
タケ○プターを頭に付けたまま、絶望感から床に手をついて嘆いたその時。
「おい、迎えに来たぞ!」
「っ……?」
仲間を乗せたヘリコプターが、こちらへ向かってくるのが見えた。
タケ○プターを俺に渡した奴が手を振っている。
「お前、なんでそれ頭に乗せてんだよ?」
「え?いやこれタケ○プターじゃ」
「何言ってるんだ。アンテナ付き電波受信機だろ?」
「………電波受信機」
恐る恐る、頭からタケ○プターを外す。
「それのおかげで俺たちが迎えに来られた」
「………」
タケ○プターじゃ、ないのか?
えっそれじゃ、さっきの俺アンテナを頭に…?
アンテナで飛ぼうとしてたってことか?
「紛らわしいわ!!!!」
周囲に響き渡る声で叫び、俺はタケ○プター…否、電波受信機を力いっぱい空へ投げた。
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