弟子がぐるぐるするだけ


いなくなった彼をついに探し出したあの時、本当は思い切り飛びつきたかったんだ。でも出来なかった、彼は僕だけのものじゃないから。

それまではそんなこと考えもしなかった。
彼は僕を大切だと言っていつも少し先のところから見守っていて、確かに期待を寄せてくれていた。父さんみたいに優しくて、彼がいるだけで安心出来て。それだから、いつの間にか勝手に僕らの関係が特別なものだというような気でいたんだ。
確かに少し、少しはそうだったかもしれない。きっと他の弟子たちよりも沢山目をかけてくれていた、と思う。
そう、以前の僕はそんなふうに過ぎていく日々に満足していた。

…はずだったのに、違ったのだろうか。

いいやそんなことはない。本当なら他人だったかもしれない僕を、まるで自分の息子のように真剣に愛してくれていたんだ。こんなに幸せなことが他にあるだろうか。
いいじゃないか、これで。十分じゃないか。僕は師匠である彼に何を求めているんだ。今まで弟子として、あんなに可愛がってもらったじゃないか。
僕だってもう出会ったばかりの頃のような子供じゃない。彼には彼の人生があるだろう、いつまでも世話をかけるのはやめないと。むしろこれからは僕が、彼にもらった多くのものを返していかないと。我が儘ばかりじゃあ、駄目だ。

彼のために生きないと。

僕のぐるぐるの答えはその中で、見つける前に少しずつ散らしてしまえばいい。僕はもういい。彼がいるならなんでもいい。


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