過去拍手お礼文…片桐有本
もしも片桐と有本がRPGの住人だったら
「ここから南東に少し歩いたところにある村で、ドラゴンが出たってえらい騒ぎになっていましたよ。そいつが人を食っちまうんですって」
魔物を狩って生計を立てている手練れのバトルマスター、ヨヒトは、酒場で旅の商人から様々な魔物の情報を聞き出していた。
「そうか、解った」
ヨヒトが商人に情報代を払って椅子から腰を上げようとした時、彼の隣に座っていた女連れの男が声をかけた。
「お兄さん一人で行く気?」
「…お前は何者だ」
「ただの遊び人だよ」
挑発的に笑うその男を、ヨヒトは刺すように睨みつける。
「その遊び人が、何故俺の仕事に口を挟むんだ」
「うーん…気紛れ?」
まるで話にならないというように、ヨヒトは黙って席を立った。
翌日、彼は早速噂の村を訪れていた。
村人の話を聞けば、ドラゴンを倒した報酬は相当の額になるとのことだ。これだけの大金が転がり込むとなると、素早く行動を起こさなければ他の者に先を越されてしまうかもしれない。
だからヨヒトが危険だから止めておけという村人の警告を全く聞き入れなかったのも、仕方がないと言えば仕方がないことであった。
ドラゴンが住むのは村はずれの森。
この地域一体の食物連鎖の頂点に立ったドラゴンは、身を隠すこともせずに森の入り口で昼寝をしていた。
「随分と不用心だな」
どうでも良さげに呟きながらヨヒトが愛用の剣を抜いたその時、凍えるような殺意を感じて目覚めたドラゴンが太い尾を彼めがけて振り下ろしてきた。
「!」
不用心だったのはヨヒトの方で、重い一撃を避け損なった彼の身体はいとも簡単に吹き飛び背後にあった大木に背中を叩きつけてしまった。
手にしていた剣が金属音の悲鳴をあげて地面に転がる。
ぐらぐら揺れる視界の中で、ドラゴンの大きく開いた口とそこに並ぶ凶器のような牙をヨヒトは確かに見た。
(俺が剣を拾うのが早いか、奴が俺を噛み砕くのが早いか)
決死の覚悟で伸ばした腕が剣に届く前に、どこからか口笛の音が聞こえてきた。
モンスターを誘うその音色に反応し、ドラゴンは後ろを振り向きそちらに向けて走っていく。
「ね、オレ様と一緒に戦ってみない?」
数分後、大金を手にした遊び人の問いかけに、ヨヒトは一瞬頷きかけてきっぱりと断った。
おわり。
----------------------
ログトップ
|