過去拍手お礼文…小村照山



もしも照山と小村がRPGの住人だったら

へたれ勇者テルヤマはどうしようもないへたれだったがへたれなりにどうにか頑張って、長い冒険の末に魔王の城までたどり着いた。
因みにその経緯は面倒なので省略させてもらう。まあ大して派手なことをした訳でも無いので妥当な判断である。

「ついにここまで来たぞ…この奥が魔王の部屋か………っていうか出だしからへたれへたれ言い過ぎじゃない?」

テルヤマは地の文に対して文句を言いながら、荘厳な装飾の施された扉を強く押した。

…が、開かない。
ビジュアル重視で仕上げた扉は、へたれ勇者テルヤマにはあまりにも重すぎたのである。

「っ、何だよこれ、くっそ重…あ、もしかして引くタイプだった?」

押し疲れて試しに引いてみたがびくともしない。
仕方がないので、テルヤマは押し引きを繰り返したり左右からスライドさせようと試みたりシャッターのように下から持ち上げようとしたが手をかける隙間が無くて挫折したりふてくされて寝たり復帰してあちこち押してボタンを探したり自動ドアのように正面に突っ立ってみたが反応がなく恥ずかしくなったりした。

そうして扉と格闘すること三十分、彼が扉に向かって様々な呪文を唱え始めたころ、ようやく状況に変化が起こった。

「インパス!インパス!インパスン!インパスーマ!」
「…何してんのお前?」
「うわああっ!?」

突然後ろから声をかけられ、テルヤマはびくんと肩を跳ね上げた。
それから顔を真っ赤にして振り返ると、悪そうで強そうな服装の男と目があった。

「ちっ違うんだ、僕は決して怪しいものじゃない、精神もまともなんだ!頼むからそんな目で見ないで!」
「あ、ああうん…大丈夫解ったよ」
「本当に?」
「うん、無かったことにする」

男は笑顔で頷きテルヤマもそれに納得したが、何故だか二人の間の空気が少しだけぬるっとした。人間の記憶力を馬鹿にしてはいけない。

「…え、えーと…そういえば君って誰なの?」
「おれ?魔王だけど。お前は?」
「…勇者」
「え、まじで?」
「なんだその意外そうな顔!僕そんな弱くないからね!」
「わっ悪かった!ほら、とりあえず中入れよ」

勇者並みに魔王らしくない魔王は、コンビニのレジ袋を片手に空いた方の手でナチュラルに扉を押して開いた。

「これちょっと重いんだ。まあ開けない程じゃないけど」
「………」

テルヤマは正しい開き方を見て驚くと同時に微かに苛ついたが、魔王に悪気は無さそうだったし結果的に扉が開いたので何も言わなかった。終わり良ければほにゃらららである。

「今コンビニで大量にプリン買ってきたんだけど、一緒に食べる?」
「…いや、僕は…」
「杏仁豆腐もあるけど」
「!」
「…ところで勇者?は、なんでうちに来てたんだ?」

キョトンとする魔王に、勇者テルヤマは思わず観光に来たと答えてしまったのだった。

その後彼が幸せそうな魔王に見守られながら杏仁豆腐を頬張っていたことは最早言うまでもない。


おわり。

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