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植え込みをよくよく見てみると、生い茂る草と地面の境目からスニーカー(メロンパン柄)が二足そろって覗いていた。
「よしよし、よーしよぉおっし」
「なにしてんの小村くん…」
「えっ…そんな、照山が喋った…!?」
相変わらずアホ全開なコメントに微かだが苛々してきて、僕は無駄に爽やかな黄緑色のスニーカーを両方掴むと渾身の力を込めて引っ張ってやった。
「セイ!!」
「おべふぁす!!」
ばきばき、ずざあーっと露骨に痛そうな音がして、服や髪のあちこちに葉っぱをくっつけたうつ伏せの小村君が釣れた。僕の気分は野菜を地面から引っこ抜く時と似ている気がした。
「い、いたた…何が起こったんだ?」
小村君は目に涙を浮かべて僕を見上げてきた。頬やおでこに擦り傷ができていて、自分でやっておいて少し可哀想になる。
「…小村くん、ごめ」
「あっ…なんだ照山かあ!!うへへおはよう!!今日もいい天気だな!!」
「………もうお昼も過ぎてるよ…」
謝ろうと思ったのにツッコまされてかなわなかった。
くそ、もういいや。
「そっかあ、じゃあこんにちはだな。照山超こんにちは〜」
「はいはい。…それでさ、さっきはどうして僕のこと呼んでたんだ?」
小村君は僕の方を向いて地べたに正座した。
僕は面倒なので彼のふわふわ発言を適当に流して話を本題に進める。
「ん?いやいや照山のことは呼んでないよ。おれ照山と遊んでたんだもん」
「だからその発言がおかしいんだって…あ、」
謎めいた発言にツッコミを入れた時、へらりと笑う小村君の後ろから何やら小さいふさふさが出てきて彼の膝の上に乗っかった。
よく見るとふさふさの正体はふさふさしたクリーム色の子犬だった。
「あ、照山!よしよし、いいこいいこ」
「…え、」
「可愛いだろ?こいつ照山っていうんだ」
小村君がふさふさをふさふさしながら笑う。ふさふさは彼にふさふさされてふさふさのしっぽをふさふさ振っていた。ふさふさ。
「…紛らわしいよ!!」
「へぶぁ!!」
僕はエコバッグから取り出したチラシの束を丸めて小村君をぶん殴った。
突然の出来事にふさふさがびくっとする。ごめんふさふさ。
「どうして僕の名前なんてつけるんだよ…大体、犬なのに照山なんて悲惨過ぎるじゃないか」
「だ、だってふさふさしてて照山みたいだったから…」
「ストレートにも程があるよ!!使うにしたって、せめて下の名前だろ!!」
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