黙れ、このクソジジイ


 面倒臭くないはずがない。人間の子どもは泣いてばかりだ。当時は下級悪魔より低能ではないかと思った。ただ、今思えば泣いてばかりの昔の方がマシだった気もする。
「メフィスト、てめぇ俺のゲームのデータ勝手に消しやがっただろう」
 ずかずかと歩いてくるのは、あの泣き虫だった子供。命が助かったことを喜びもせず、朝から晩まで泣き続けるという非生産的なことばかりしていた子どもは、今はもう大人と変わらない大きさまで成長した。
 成長したのは体だけだが。
「名前君、言葉遣いが汚いですよ」
 特に言葉遣いについては一気に退化した。
「黙れ、このクソジジイ」
 人間は"恩"というものを大切にするらしいが、これにはそれが当てはまらないらしい。
 コートを乱暴に羽織り、部屋から出ていこうとする後ろ姿に尋ねる。
「どこに行くのですか?」
「燐のところ」
 我らの小さな末の弟は、最近祓魔塾に入った。何処かでばったりと遭遇したらしく、最近はよく遊びに行く。
「仲が良いようですね」
「てめぇみたいな奴とずっと一緒にいると、気が狂いそうになるんだよ」
 乱暴に戸を開けて叩きつけるようにして閉める。嵐が去ったような部屋の中で、私は嗤った。
「あなたは何処までも我らの父に縁があるらしいですね」
 私を怖がって泣いていたあの頃の方がずっと賢かった。
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