プラズマ注意
ナギサシティの人間が私に危害を加えることはない。私を敵に回すということは、どういうことかを知っているから。ナギサシティの住民は、そんな馬鹿なことはしない。
それは決して私の過信ではないはずだ。
私は、暗い路地裏の資材置き場に閉じ込められていた。当然、ポケモンは奪われた。自分の身より、奪われたポケモンの方が心配だ。
奴らの目的は私のはずだから、そんなに乱暴はしないはずだが。
「デンジ、殺す」
あのいかついお兄さんが女と言った時点で、デンジ関係だと分かった。デンジと別れた女が、勝手に話を作って私を悪者に仕立て上げたのだろう。虫唾が走る。勿論、怒りの矛先は女やお兄さんだけではなく、デンジにも向く。当然のことである。
そんなことを考えていると、資材が崩れる音と共に光が差し込んだ。資材置き場をぶっ飛ばして入って来たのはレントラーと……
「名前、何してやがる?」
そこは、大丈夫って訊くべきだろう、この元凶が。
「怪我はないか?」
ふと目の前に影が入る。オーバだ。
「大丈夫」
オーバは優しいなぁ。そう思いながら立ちあがると、鞄が投げられた。デンジ、手渡すとかいう選択肢はなかったのか。
まぁ、いい。やってやろうじゃないか。
お兄さん、炎と雷のことをなんていうか知ってるかい?
「エレキブル、雷パンチ」
ポケモンを使っている時のデンジの声は、いつもと全く違う。いつもこのぐらい真面目にやればいいのにね。容赦ない雷パンチが男のポケモンに向けられる。
「ブーバーン、火炎放射」
オーバは、さっきまで私を心配していたのが嘘のような明るい声だ。
昔は三人で追いかけっこをしたり、取っ組み合いをしたりした。今はできない。勝負は決まっているから。二人には勝てない。
でもね、ポケモンだけは私も結構できるんだ。二人が本気用のエースを使うなら、私も出してやろう。
「ポリゴンZ、トライアタック」
ナギサシティ、現在プラズマ注意報発令中。
「オーバ、デンジ捕まえといて」
「了解、思う存分殴れ」
「オーバ!!」