プラズマ波動


 男女の差が出てくるのは仕方のないことだったと思う。
 一緒に山に登るにしろ、走るにしろ、ケンカするにしろ、名前だけが遅れを取るのは仕方がないことだ。ほら、デンジがニートでオタクで一人暮らしすらまともにできないだらしない男であることと同じことだ。
 名前はその悔しさをポケモンバトルにつぎ込んだ。名前は、ポケモンバトルを職にしている俺たちと違って、多くのポケモンを持つことはできない。
 しかし、おそらく名前は三人の中で一番強い。タイプにも拘らず、少数精鋭のポケモンを操る名前は、ジムリーダーや四天王としてもやっていくことはできない。しかし、実力だけなら、簡単に務めることができるだろう。
 それでも、名前は市場の仕事を選んだ。あんなにバトルにのめり込んでいたのに、勿体ないと言ったらそれまでだが、腕は全く落ちていない。この前は、デンジがインファイト、と呻いていた。俺も呻きたい。あいつのルカリオのインファイトは痛すぎる。
 今も三人でポケモンバトルをしたり、デンジの家の掃除をしたりするのだが、昔はもっと一緒にいた。祭りの間もずっと三人で浴衣着て騒いでいた。俺とデンジに彼女ができてからは、バトルの腕を見込まれた名前は警備の仕事をするようになり、浴衣を着なくなった。三人とも別々に行動するようになってしまった。
 それでも、三人で過ごす時間はある。
 彼女を送り届け、俺は祭りに戻る。そろそろ、祭りも終わる。片付けを手伝いながら、デンジと名前と騒ごう、と思っていたところだった。
「おい、デンジ、どこへ行く?」
 ルカリオ、ライチュウ、デンジが走っていた。無茶苦茶滑稽だぞ、この三匹。俺も慌ててゴウカザルを出して追いかける。
「名前に何かあったらしいぜ」
「彼女は?」
 いつも、デンジはもう少し遅い時間まで彼女といるはずだ。彼女の家が遠いからだ。
「さっき別れた」
 デンジはあっさりと言った。どうせ、浴衣が綺麗だね、という一言を言い損ねたか何かだろ。
 そう思いながら前方をルカリオの方に目をやる。紅い目は酷く鋭い。無邪気なルカリオがこんな顔をするんだから、只事じゃない、と俺は思った。
 しかし、名前を襲うなんていう命知らずな真似をナギサシティの人間がするはずない。
 そうなると、原因と犯人は絞られてくる。
「お前さぁ、最近付き合っている奴、外部の人間だろ」
「それがどうした?」
 デンジはとぼけた顔して聞いてきやがった。分かっているだろ、絶対。
「お前の女の後始末の悪さが原因だったらしばくぞ、てめぇ」
「その前に、名前に殺される」
 分かってんじゃないか、デンジ。笑い事じゃないけどな。
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