デバイ遮蔽


 昔から、デンジとはよく喧嘩をした。私もデンジも喧嘩に強かった。だから、なかなか勝負がつかずに、大抵オーバに止められて終わった。でも、いつしかデンジに負けるようになってしまった。
 何で、私だけ女の子なの、と母にいつも尋ねていた気がする。一人だけ仲間はずれなのが、悲しくて仕方がなかった。
 二人が気付かない、私だけが気付いている男女の壁。
 オーバの彼女は今年で五年目になる。とても性格がよくて、オーバのことを信頼し、また、デンジに世話を焼くオーバを見守っている。
 デンジの彼女は、ミーハーな人が多いけど、最初は一生懸命デンジの世話を焼いてくれる。でも、続かないんだよね。気持ちは良く分かる。私もデンジの部屋の掃除は、絶対に一人でやらないことにしている。一人でやったら、気が狂いそうになる。
 デンジの彼女には同情する。デンジが長く続かないのは、絶対にデンジの方に否がある。
 そして、私は今まで誰とも付き合ったことがない。
 私は恋に興味がないのかもしれない、と最近思い始めた。正直、彼氏を作るよりも、デンジとオーバと過ごしていた方が楽しい。彼氏を作れば、今のようにデンジの世話をオーバとともにすることもできなくなる。
 でも、たまには彼氏が欲しいな、と思う時もある。
「名前、警備のバイトか!」
「名前さん、こんばんは」
 私は年に一度の夏祭りの会場で警備をしていた。そんな私に明るく声をかけるオーバと、丁寧に挨拶をしてくれる彼女さん。
 昔はよく三人で夏祭りに来て騒いでいたのになぁ、と思うと少し切ないがしょうがない。アフロでもいいよって言ってくれる彼女がいてよかったね、オーバ。
 オーバと彼女さんを見送って暫くすると、デンジとその彼女さんが来た。彼女さん美人だなぁ。でも、全然楽しそうな顔していないな。まぁ、デンジもだけど。
 面倒だから他人のふりをしておこう。昔は、デンジの彼女もナギサシティの人が多かったが、最近は外部の町の人ばかりだ。
 ふと路地の方へ眼をやると、少年と厳つい顔のお兄さんがいた。
 カツアゲかよ、面倒だな、と思いながら現場に近づく。どうやら、カツアゲしている方はナギサシティの人間ではないらしい。
「はい、そこの僕。路地に入ったりしないようにね」
 とりあえず、少年を無理矢理引き離し、大通りの方に出す。
「お姉ちゃん、ケンカ売ってるのか?」
 カツアゲをしていた厳つい兄ちゃんは、そう言いながらモンスターボールを握った。
「ポケモンバトルね、ハイハイ」
 ボールからルカリオを出す。
「ルカリオ、悪の波動」
 悪の波動で一撃。なんて手応えがないんだろう、と思いながら、背を向けようとすると、肩を掴まれた。
「お前の名前は名前か?」
 はいそうですが、と答えると、ひやりとするような冷たい声で言われた。
「俺の女を随分と虐めてくれたらしいじゃないか」
 その次の瞬間、私は意識が遠のくのを感じた。歪む視界の中で、ルカリオが物陰に隠れるのが見えた。
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