手伝ってやるからもう少し頑張れよ


 一年生の時、同室の不運に巻き込まれてやってきた戦場。戦場に似つかわしくない幼い子どもを見つけたのは、偶然だった。そんな子ども山程いる、とか連れて帰ってどうするのかなんて尋ねるような奴もいなかった。戦場で、それも泣いている幼子を見つけて、放っておくような奴じゃなかったんだよ、俺と伊作は。
 最初、先生方や学園のみんなに受け入れられるまでが大変だった。俺と伊作が自分たちの食事を少しずつ分け与えて何とかやっていた。しかし、幸いなことに彼女は器用で賢かった。俺たちが委員会に連れまわしていたことも、幼かったこともあるだろうが、俺たちの数倍の早さで用具の取り扱いや薬草の知識を吸収していった。俺たちが授業の間、委員会の仕事をこなす名前は少しずつ学園に受け入れられていった。
 今では彼女も八歳になり、一年生よりも年下とはいえ、下級生よりも遥かに仕事ができる。
 真夜中までかかる用具点検。
「先輩、まきびし全部ありました」
「耆著もありました」
 一年生たちが点検を終えていく。点検が簡単なものを割り振っておいたが、それでも真夜中までかかってしまったのは可哀想なことだが、今回はどうしようもなかった。疲れ果てた背中を送りにながら、俺は石火矢を下した。
「手裏剣も全部ありました」
「作兵衛ももう帰れ」
 三年生は明日も朝から実習があるはずだ。俺たちの方を申し訳なさそうに見やる作兵衛を追いだすようにして返すと、俺は一人で黙々とまきびしの手入れをしている名前を見た。
 いくら用具の手入れができるとはいえ、まきびしの手入れを一人でやるのは大変なことだ。時折目をこすりながらまきびしを磨いている。俺の視線に気づいたのか、名前は顔を上げた。
 疲れきった顔をしている。
「悪い、名前。あいつらにはまだ難しい」
 限界が近いのだ。石火矢を棚の中に入れながら言うと、はい、と細い声が返って来た。ああ、これは俺が伊作に怒られるパターンだな、と思いながら石火矢を下す。
「終わったら手伝ってやるからもう少し頑張れよ」
 そう言うと、少しだけ元気になったような返事が聞こえた。


手伝ってやるからもう少し頑張れよ

御題:確かに恋だった

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