反面教師と五年生

委員会対抗戦の段


「どうするの?」
「どうするの、って訊かれても困るんだけど」
「どうしようもないだろ」
 目の前の惨状を前に、五年生四人で四年生以下下級生を庇うように立つ。図書委員、体育委員、会計委員で交戦してきたところに、保健委員と不運に巻き込まれた用具委員が落下、そのまま戦闘に突入。そこで、漁夫の利を狙おうとしていた作法委員のところに迷い込んだ用具委員のしんべヱと喜三太がやってきた。二人は立花先輩を見つけ、立花先輩が宝禄火矢を暴発させ、そのまま戦闘に巻き込まれる。
 六年生がこれだけ集って戦っていては、もうどうしようもない。私たちは一年生から順に保護し、結局六年生以外の全ての下級生を保護することになった。
「危ない」
 ふらりと前に出ていこうとする下坂部を止める。
「でも、食満先輩止めないと……言わなきゃ分かりませんから」
 そういえば、下坂部は用具委員だった。食満先輩の話によく出ることからして、可愛がられてはいるのだろう。あの頭に血が上りやすい性格に振り回されているとも言うが。
「下坂部が怪我すると、先輩が怒られちゃうからなぁ」
「五十嵐先輩が、ですか?」
 その言葉に頷く。だから、先輩のために一緒に帰ろう、と。
「多分あの人たちは放っておいても大丈夫だよ。まぁ、死にはしないだろ」
 竹谷は呆れ顔で溜息を吐いた。
「食満先輩の悪い癖っていうか……じゃあ、帰ろっか」
 はーい、と元気よく返事をする一年生に、六年生を何とも言えない目で見る常識人の二三年生、委員会で六年生で振り回されているためか真っ直ぐと学園に歩みを勧める四年生。
「みんな、あんな六年生にはならないようにね」
 その背に向かって、不破が言った。
「五十嵐、食満先輩と善法寺先輩なら止められたんじゃないか?」
 竹谷が尋ねてくる。
「無理。余計な怪我もしたくない」
 悪いが無理だ。頭に血が上った食満先輩を見た時は、流石の私も関わり合いたくないと思う。伊作は攻撃手段が厄介だから、こういう場合に関わりたいとは思えない。
 大体、痛い思いをするのも嫌なのだが。
「どの口が言う」
「ふあー」
 不破に頬を抓られた。
 五年生で歩いていると、富松が走って来た。
「五十嵐先輩、組手の相手してくれませんか?」
「食満先輩にして貰えば良いよ。あの人は指導が上手だからさ」
 別に組み手の相手になるのは構わないが、私はそれ程強くはない。稽古をつけてもらうなら、上手い方が良いだろう。大体、食満先輩とは用具委員会で一緒のはずだ。
「いや、六年生ですし……先輩武闘派ですよ」
「下級生にしてはちょっと怖いかもね。目つき悪いのもあるけど」
 ああ、怖いんだね、とその表情を見ただけで分かった。
「別に私は構わないよ。でも、多節棍は自分でやるか、食満先輩に頼んでね。なかなか癖の強い武器だよ、多節棍は」
 ただの組手なら構わないが、多節棍の指導は無理だ。私の打撃武器の成績は人に見せられるものではない。
「知っています」
 その時の表情は先程食満先輩の名前を出した時の表情とは別人のようで、ああ、この子は強くなるな、とそう思った。
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -