まさかの火薬委員会

委員会対抗戦の段


 その日の学級委員会では委員会対抗特別予算争奪戦についての話があった。特別予算をかけて委員会が争うのだ。
「学級委員会は参加しないの?」
「予算いらないだろ。それに五年三人に一年二人。流石に精鋭すぎる」
 委員会にこない尾浜を入れて五人。確かにうち三人が五年生なのはおかしいかもしれない。 そして、確かにうちは予算を必要としていない。
 なんた、つまらない、と思っていると鉢屋がわざとらしく咳払いをした。
「人数と戦力調整で彦四郎とお前で火薬な」
「火薬? 他に選択しないの?」
 火薬委員会といえば五年い組の久々知兵助が委員長だ。参加できるのは嬉しいが、他に生物とかいう選択はないのだろうか。
「火薬ったら、火薬。どう考えても、そこが一番戦力不足だろ」
 確かにその通りだが、私が行って火薬委員会の助けになるのだろうか。毎日、教科を一緒に受けているものの、久々知とは必要以上の会話をすることはない。
 私は下手に話しかけて不快な思いをするのはごめんだった。
「分かった」
 どうせ久々知も六年生率いる委員会を出し抜いて勝とうなどとは思ってはいないだろう。圧倒的な戦力不足を補うためには相応の覚悟と賭けが必要だ。久々知がそれを考えるとは思わなかった。
 五年間、同じ学年にいればそのくらいのこと分かる。
「あの、先輩は庄在ヱ門の方が良いのではないですか」
「別に今福と行くのは全然構わないよ」
 不安げに尋ねる今福にそう答える。
「私は五十嵐先輩と一緒は嫌です」
「あはは、庄ちゃんったら、毒舌」
 黒木をどつきながら、今福を見ると、今福は目を丸くしていた。


 委員会対抗特別予算争奪戦の話が出た。ただでさえ五年が委員長なのに三四年生すら一人もいない火薬委員会が六年生率いる委員会に勝てるはずがないから、参加だけしてみんな怪我がないように終われば良いと思っていた。
 だからこそ、竹谷の話は衝撃的だった。
「火薬にくる援軍が五十嵐と今福って、本当か?」
 学級委員長の鉢屋を捕まえて尋ねると、鉢屋は頷いた。
「何で五十嵐なんだ。お前とか勘右衛門とか……」
 学級委員会所属の五年生は五十嵐だけじゃない。何故、よりによって五十嵐なのだと、そう尋ねた。
「他の委員会のために頑張れるのは敬助だろ」
 鉢屋の言葉に溜め息をつく。火薬委員会は既に色々と問題を抱えているのだ。
「あのなあ、火薬は三郎次と伊助は仲悪いし、それを見て五十嵐が黙っているはずがないし、何より私と五十嵐が……それだけじゃなくて、斉藤さんとの距離感も掴めないし、五十嵐と一緒に来る今福ってい組だろ」
 勝敗の問題以前に、対抗戦の期間中一緒に過ごせるかということが問題なのだ。
「まぁ、何とかなるだろ」
 三郎は軽く言った。しかし、どうにかなる気がしない。起こることどころか集まったときの雰囲気ですら予測不可能だ。
「ならないよ」
 気が重くて仕方がなかった。
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