女装少年の入学

女装少年の段


 兄は弱虫で、一つ下の私とケンカしてはすぐに泣いていた。兄はいじめられっ子で泣き虫だった。
 それでも、私は兄が大好きだった。兄は素直で優しかった。人に優しく素直であるためには強さが必要だ。私は、兄が優しく素直にあるために必要な強さを支えたかった。
 今も昔も変わらない。
 私は伊作を守った。忍たま二年生は怖かった。でも、私は守りたかった。それは偉いことでも、不自然なことでもない。当たり前のことだ。兄が忍術学園に入るまで、私がずっとずっとやってきたことだ。
 私が兄をいじめる奴らを追い返すと、決まって兄妹ケンカが起こった。それでも、夕ご飯を食べる時には仲直りをしていた。そう、今まではずっと。
 私は、このケンカがこれ程長く続くなどとは欠片も思っていなかった。
「新入生、なかなか根性がありそうだな」
 学園長の庵に行く途中、黒い服を着た忍者に話しかけられた。
「ありがとうございます。先生ですか?」
 私のことを見ていたのだろうか。私がそう尋ねると、忍者は頷いた。
「私は善法寺伊勢と申します。善法寺伊作がいつもお世話になっております」
 私が挨拶をすると、その先生は人の話を聞いているのかいないのか、いきなり叫んだ。
「忍術は根性だ」
 この先生は私を励ましてくれているのだろうか。
「ど根性だ。分かるか?」
 根性だったら、私はだれにも負けない自信がある。
「はい」
 私が元気よく返事をすると、先生は笑った。
「俺は大木雅之助だ」
 大木先生との出会いは私の学園生活を大きく変えることになる。



 大木先生は学園長先生の庵まで行く間、様々なことを話してくれた。上級生になってからの実習や、学園長先生の思い付きの行事など。全てが輝いて聞こえた。
 大木先生は昨年まで六年は組の担任だったらしい。そのは組の先輩方の一年生から卒業までの話はとてもおもしろかった。私もあんな風に学園生活を送って、忍者になりたいと、そう思った。
 学園長先生は歩いてきた大木先生と私を見て、大木先生の担当するは組がいいだろう、とおっしゃった。かくして、私は一年は組に入学することになった。
 新入生が集まっているという教室に入ると、驚いたことに男の子しかいない。
「先生、この組って男の子しかいないんですね」
 忍術学園についての説明を受けた後、大木先生にそう尋ねた。
「女子はくの一教室に行くからな」
 私は思考が停止した。
「どうした?」
 私の表情の変化に気付いたのか、大木先生が怪訝そうな顔をした。
「私、女の子なんですけど」
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -