戻りはしない仲間
武州時代からの仲間だが、それ以前のことはよく分からなかった。しかし、それでも俺たちにとってかけがえのない仲間であることは変わりがなかった。
「沖田君、また土方さんとケンカしたのですか?」
いつもそう尋ねて苦笑いをしながら総悟を宥めに行った。総悟は山南のことを慕っていて、山南の言うことはよく聞いた。
しかし、俺は気付いていた。トシとの間で意見が割れることが多くなった。総悟とも疎遠になっていった。俺はお世辞にも空気の読める人間じゃない。
それでも気付くほどの亀裂。
「近藤さん、山南が逃げ出した」
ある日の朝のトシの言葉を聞いた時、バットで頭を殴られたようだった。
「どういうこと?」
「総悟に行かせた」
動揺する俺を前に、トシは淡々と言った。
「戻ってきたら切腹だ」
否定はできなかった。局中法度にそう定められているため、否定することはトシを愚弄することだ。それに、トシも辛いことは分かっていた。
「山南に会いたいな」
総悟は山南を連れ戻すことができるような気がした。ただ、戻って来た山南が俺たちの知っている山南であるとは思えなかった。
「沖田君、沖田君、一緒に……」
山南はそう言って総悟を誘い出していた。総悟を可愛がっていた。いつも笑顔で、怒ることは滅多になかった。
頭がよく博識だった。真選組には勿体ない人材だった。しかし、彼は俺についてきてくれた。
「近藤さん、私もこの道場に……」
俺に負けた時、頭を下げてそう申し出てきた頃が懐かしい。