先生の面影を残して


 山南は夕飯を作ると何処かへ行ってしまう。万事屋に帰って来た時には日付が変わっていることも珍しくない。その頻度が最近二三日に一回になってきている。
「おい、山南、最近何してやがる?」
 日付けが変わった頃帰って来て、シャワーを浴びた山南を廊下で捕まえて尋ねる。山南はいきなり話しかけられて驚いたようだった。
「すみません、起こしてしまいましたか?」
 お茶を濁したい、という気持ちだけは伝わるが、その程度で折れるつもりはない。山南は無意味な隠し事をしない。
「質問に答えろ」
 少し押せば、山南は答える。
「真選組に不穏な動きがありまして、最近はそれを探っています。どうやら、高杉と繋がろうとしている一派があるようです」
 俺は呆れて溜息を吐いた。山南は全く変わっていない。小難しいことばかり話しているせいで気付かれ難いが、山南は基本的に組織の枠に囚われない人間だ。その上義理深い。
 しかし、心配でもあった。高杉のバックについているものは、山南一人でどうにかできるものではない。山南は無茶はしない人間だ。話せばわかる。俺はそう信じて、事実を言うことに決めた。
「高杉は……」
 山南は俺の顔を見た。
「宇宙海賊春雨と繋がってやがる。だから……」
「銀時、それは本当ですか?」
 山南は怖気つくどころか目を輝かせた。山南の頭の中で何かが繋がった時にする表情だ。俺はこともあろうに山南の導火線に火をつけてしまったらしい。
「厄介なことになりましたね」
 それは本音だろう。しかし、山南は厄介事になることを知っていたらしい。頭を回転させているのか、山南は微笑を浮かべ軽く瞼を閉じた。
「山南、聞いているか?」
 山南は、はい、とは答えたが聞いていないのは火を見るよりも明らかである。
「何のためにてめぇの命助けてやったと思ってる」
 そう言うと、我に返ったかのように山南は目をぱちくちりさせた。
「すみません」
 すみません、ですがこの問題には関わります、と山南の顔には確りと書いてある。
「っても聞かねぇことぐらい分かってるわ、ボケ」
 投げやりに言ってやると、山南は緩やかに微笑んだ。
「身の程を弁えて行動しようと思います」
 おやすみなさい、と山南は部屋に戻っていった。俺はもう再び大きな溜息を吐いた。
 高杉は意味もなく山南を傷つけることはないと思っている。
「高杉とは程々にやってくれよ。てめぇは少しだけ、先生に似ているんだ」
 山南の笑顔や立ち振る舞いが先生に似ていることは、俺たち三人の共通認識だった。
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