仕事はなくても恩はある


 銀時が全てを話していてくれたようだった。万事屋の扉を開けると、神楽と新八が飛び出してきた。
「山南さん、待っていました」
 よく一緒に手合わせをした新八君は照れたように頭をかいていた。
「敬也のこと、柚子姉って呼んでいいアルか?」
 手を握って見上げる神楽ちゃんの笑顔はとても明るかった。
「ありがとうございます。これからよろしくお願いします」
 銀時は万事屋に置いてくれるらしい。勿論、万事屋を手伝うと言う交換条件がある。
「柚子姉は料理は得意アルか?」
「下手ではないと思いますよ」
 真選組では女中さんが料理をしてくれるのでほとんど手伝うことはなかったが、私はそれなりに料理はできる。
「良かった良かった。卵かけごはん地獄から解放される」
 銀時はにやにや笑いながら神楽ちゃんを見た。
「手合わせはこれからも?」
「新八君が良いのなら」
 新八君はありがとうございます、と笑顔で答えてくれた。私も新八君と手合わせするのが好きだ。新八君は強い。
 楽しそうに走っていく二人の後ろ姿を見ていると、銀時が言った。
「何かふっきれたようなふっきれていないような顔しているな」
 どっちですか、と笑う。
「私にはまだ仕事がありますから」
 沖田君の微笑、土方さんの言葉、近藤さんの涙目。私は三人にできることがある。そう、あの日に決意した。伊東鴨太郎に話を持ちかけられた日に。
 ずっとずっと忘れていた。ただ、三人の変わらぬ姿を見て思い出した。私のすべきことは目の前にある。
 私は再び伊東鴨太郎に接触する。彼の協力者として。
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