裏切りの香りと疑い


 北斗一刀流。同じ流派に所属していた真選組総長は思慮深かった。当然だ。北斗一刀流は田舎流派ではなく、洗練された流派なのだから。
「ええ、全くその通りです。私もそう思っておりました」
 僕の計画を話すと、彼は微笑を浮かべながら頷いた。当然だ、と僕はほくそ笑んだ。そして彼はその後、私に手紙を送って来た。
「私はあなたに真選組局長になっていただきたいです。このままでは、真選組は……」
 抜け目のない彼は今もまだ生きている。実の妹を使うだけの狡猾さを彼は持っている。


 土方さんは山南敬也は実妹を使って逃走した、という知らせを出した。勿論、その実妹はかぶき町に住んでいることも公表した。
 山南さんが静かに生活できるようにという配慮だ。
「伊東先生から手紙が来たが、読むか?」
 俺は土方さんから手紙を受け取った。伊東は土方の嫌う真選組参謀で、今は中央にいる。山南さんと同じ北辰一刀流だが仲は良くなかったはずだ。
 しかし、その内容は山南さんの逃亡を惜しむもので、ご丁寧に句までついている。
 一つの危惧が生まれた。信じたくない。
「山崎、伊東と山南さんは本当に仲が悪かったのか?」
 土方さんは山崎に尋ねた。
「山南さんは、伊東と密約を結んでいたようです」
 頭の中が真っ白になった。
「どちらも大切ですよ。どちらも私の一部のようです」
 揺れる電車の中でのあの人の微笑が少しずつ崩れていった。
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