「シンク!また濡れて帰ってきたの!?」




ちょうど任務から帰ってくると、まるで待ち構えていたかのように手にタオルを持ったナマエがいた。



ナマエは六神将補佐で優秀な部下で、かなり昔に髭にナマエを第五師団の副師団長にしたいと何度も何度もウザいくらいに申し出たけど、悉く却下された。

ナマエを僕のものにしたかったけど、裏では他の六神将が“ナマエは皆のもの説”とかいうのを考えだして、誰か1人だけの直属の部下にするのはいけないらしい。
だけどナマエは僕の……恋人でもある。つまり必然的にナマエは僕のモノ…!

他の六神将や兵士達は僕達がこういう関係だということを知らない。
だからナマエは皆のものとか言ってるんだろうけど…。




「今日の天気予報を聞かなかったの?雨が降るってなってたんだよ」

「ナマエは知ってるでしょ、僕が預言を嫌いなこと」

「知ってるけどせめて傘ぐらい持っていきなよ、朝からちょっと降ってたんだから……」



それぐらい知ってる、外を見れば雨は降っていて濡れてしまう。だけど僕は雨を無視して任務に行った。
僕だって雨に濡れる理由があるんだ、ちゃんとした理由が……



 


僕がナマエから顔を背けているとナマエが持っていたタオルを頭に掛けられた。



「いいって…」

「駄目」

「………」


ナマエが真剣な眼差しで僕の濡れた頭を拭いているので黙った。それにナマエに頭を拭かれるのが嫌なわけじゃない。



「早く乾かさないと風邪をひいちゃうんだよ?」

「ひかないよ、僕はそんなに柔じゃない」

「仮にも14歳なんだからひく時はひくんだよ!それにシンクが風邪をひいたら……」




ひいたら…何?
早くその先が知りたい。きっとナマエは僕の事を心配してくれているんだ。絶対そうだ。

ナマエがその続きを言わないし、俯いてしまった。僕はそれを知りたいから黙ってナマエが喋るのを待つ。



「シンクが風邪をひいたら、第五師団の皆とか、六神将の皆に迷惑なんだよ!?」



え?
今“迷惑”って聞こえたんだけど。
可笑しいな、耳に水でも入ったかな?



「あ、シンクは参謀総長だから神託の盾の皆に迷惑がかかるかな…

「他人に迷惑をかけるのはいけないんだよ?」



違う、僕が聞きたかったのはそんな言葉じゃない。
もっと僕を心配して、じゃないと僕は……



「でも…シンクが……風邪をひくのもいいかな…?」



ナマエは僕の仮面をゆっくり取りながらそう言った。

はっきり見えたナマエは、頬を赤らめて困ったような顔をしていて、「だってシンクと一緒に居られるからね」と微笑んで、僕の唇がナマエのと重なった……









僕が雨に濡れる理由?
濡れたらナマエが必ず僕を構ってくれるからに決まってる……
僕が欲しかった答えじゃなかったけど…

ナマエ、ありがとう……





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