午前ゼロ時に、(きみにキスを、)
……………………………………………

『あれ?計算が合わないなぁ・・・。』 夜のサンヨウジムのレストランホールで1人の少女が電卓とノートを見比べながら計算を確認していた。 彼女の名前はカリナ。
カリナは注文を受けたり、片づけ等を専門としてやっているが、今はデントが用事でいない為、カリナがつけていた。本来ならば、コーンやポッドがやるべきだが、お互いに揉め遭った為、カリナが受ける事になった。

『やっぱり、デントは器用だな・・・。2人が出来ない事を軽々と遣るから・・・。 早く帰って来ないかなぁ・・・。』
カリナは軽く伸びをして窓の外を眺めた。
デントとは最近、付き合い始めたばかりである。この事はコーンもポッドも知っている。だが、デントはジムリーダーも務めていて人気がある為、恋人らしい事が出来ないでいる。カリナは軽くため息を吐いてまた、ノートと電卓を使って売り上げを確かめていた。


※※※
数時間が経ち、やっとの思いで計算が終わった。カリナは安心をして机の上に伏せた。

_____その時______

―――――――― ガチャ――――――――

物音が聞こえカリナはビックっとした。 何故ならば戸締りはコーンとポッドがした筈だからである。
『・・・。誰だろう・・・? 時間が時間だし・・・。 泥棒なのかな?』 時計は11時を指していた為、恐怖心で一杯になっていた。

ゆっくりと物音がした方向に歩み始めた。 さっきの物音以来、何の音も聞こえないのでどんどんと不安を感じ始めた。
『怖いよぉ・・・。 デントぉ・・・。 早く帰ってきてよ・・・。』 何をしたらいいか分からずに混乱をし始めたカリナは心細くなってきた。

その時、カリナの肩に手が置かれた。
『きゃぁ!!??んん!?』 カリナはビックリし叫ぼうとしたが口を押さえられてしたいギュッと目を瞑った。
「どうしたんだい? それに夜遅いから叫んだら迷惑になるよ?」 カリナの頭からは聞き覚えのある優しいテノールの声が聞こえた。 そして、ゆっくりとカリナの口から手を離した。
『えぇ? デ、デント?』 カリナは恐る恐る目を開けた。
目の前には心配そうにカリナの顔を覗き込むデントの姿があった。
『っ!!! デント!!』 カリナは安心をしてデントに飛びつき、泣き出した。
「よしよし。 怖かったんだね。 何か飲み物を作るからホールに居てね。 1人でも大丈夫かい?」
デントは泣きじゃくるカリナの頭を優しく撫でカリナに尋ねた。 カリナはゆっくりと首を縦に振った。
デントからハンカチを受け取ったカリナはホールで涙を拭いていた。

「落ち着いた?」 デントがワゴンを押しながらゆっくりと歩んできた。
『うん・・・。』 まだ、恐怖心が残っているのか少し声が掠れた。
「どうぞ。 ミルクティーで良かったかな?」 カリナはコクリと頷いた。

ミルクティーを飲み、さっきの事を聞き始めた。
「さっきはどうしたんだい?」 デントは心配そうに尋ねた。
『あのねぇ・・・。コーンとポッドが戸締りをしたって言ったから大丈夫だと安心していたら物音が聞こえて・・・。それで怖くなって・・・。』 さっきの事を思い出したかのようにカリナは目に涙を溜めていた。
「そうだったんだぁ・・・。 怖かったね。入口はしてあったけど、裏口は開いていたよ。」 デントはカリナを包み込むように抱きしめた。
『・・・。ごめんなさい。』 カリナはデントの中で謝った。
「気にしないで? でも、何でカリナがこんな時間まで起きてたの?」デントは不思議に思っていた事も聞いた。
『・・・。怒らない?』 おそるおそるデントの中から顔を挙げて尋ねた。
「内容によるけど・・・。 もしかして、コーンとポッドが揉めあったの?」 デントはカリナの行動を見て聞いたら小さく頷いた。

「まったく・・・。 こんな時間までカリナを使って・・・。」 デントは軽くため息を吐いたが、下を向くと不安そうなカリナの顔が見えたので、デントはカリナを見つめた。

「カリナ。偉いねぇ。 僕が何時もしているから負担を減らそうとしたのだろ?」 デントの問いかけにカリナはデントの胸の中に顔を埋めた。

デントは時計を見計らってカリナをゆっくりと離した。
カリナは少しビックリした表情で、デントを見詰めた。
「優しね、カリナ。 凄くうれしいよ。大好きだ。」

デントは少し屈み、カリナの額にキスを落とした。

「もう、日が変わったね・・・。 寝ようか?」 普通に振る舞えデントとは違い、カリナは顔を赤くしながら頷き、二人でお互いの部屋に戻った。



To be continued



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