熟した果実のように

『頭、痛いなぁ・・・。寝不足かな?』 椅子に座ったまま頬杖をして溜息を吐いた。
机にはカリナが食器をそのままに置いたままだった。
『えっ!?こんな時間なの?早く準備をしないと!?』 食器を洗い桶につけて支度を急いでして外に出た。

熟した果実のように


『ごめん!!待った?』 待ち合わせに間に合わないと思い、息を切らせながら、カリナがやってきた。
「いや、大丈夫だよ。 それより、顔色が悪いけど、大丈夫?少し休もうか?」 心配そうにカリナを見つめるデント。
『大丈夫。 早く行こうよ!!』 カリナはデントの袖を引っ張って歩んだ。
デントは何時も以上に雰囲気が違うカリナを心配そうに見つめた。

※※※

サンヨウの門の近くの噴水に座ってデントの活き活きとした話を聞いていた。
カリナとデントにとって、今日は久々のデートをしていた。ジム戦やレストラン経営で忙しく働いていたから、なかなか二人で逢う事が無かった。カリナにとってはデントの話を聞くのがとても好きだった。だか、今日は何時もと違い頭痛と闘いながらデントの話を聞いていた。
【何か、朝より辛いよぉ・・・。何かクラクラする・・・。】 カリナはデントの話を聞きながら意識が薄らいでいた。
「カリナ? 本当に大丈夫かい?さっきより顔色が良くないけど? お昼を食べにジムに行くかい?」 デントは顔を伏せているカリナを下から覗き込んだ。
『えっ!?うん。大丈夫。 うん。お腹も空いたしデントのご飯、食べたいし・・。』立ち上がった反動でカリナがふら付き、瞼が重たくなり、瞑ったまま倒れだした。
「っ!!?カリナ!?カリナ!?」 いきなり倒れたカリナをデントはギリギリなところで受け止めてカリナに声をかけ続けた。

※※※

【んぅ・・・。あれ?ここって・・・?】 カリナは意識が朦朧としている中、目を覚ました。
「ん?気付いたかい?」 デントは椅子から立ち上がりカリナの額からタオルを取り、洗面器に張った水につけて冷やし直した。
『あれ・・・?私・・・。って!此処って何処!?』 さっきまで、噴水の近くにいたのに違うは所にいる自分に困惑しだした。カリナは慌ただしくベッドから体を半分だけ起こした。
「僕の部屋。 熱は・・・さっきよりかは良くなったね。 全く、いきなり倒れだしてビックリしたよ。 何で辛かったのに言わなかったの?」  デントはカリナの額に手を当てて熱を確認をした。
『・・・・・・。』 カリナは黙り込んだ。
「黙っていたら、分かんないよ。 カリナ?」 薄らと目に涙を溜めているカリナを不思議そうに見つめているデント。
『だって・・・。久々のデントとのデートだったんだもん・・・。』 デントは泣き出したカリナの頭をゆっくりと撫でながら抱きしめた。
「カリナの理由は分かったよ。 でも、体調が悪かったら素直に言って欲しかったなぁ…。」
『ごめんなさい・・・。』 カリナはデントの服をそっと摘まみながら謝った。
「気にしてないよ。 お粥を温め直すから少し待ってて。食べられそうかい?」 デントの問いかけにカリナはコクンと首を縦に振った。
デントがお粥の入った小さい土鍋を持って部屋を出てった。

カリナは1人になった部屋でまたベッドに体を託した。
【何か逆に悪い事をしたなぁ・・・。】 カリナは自分で反省しつつまた眠りに就いた。

※※※

「カリナ。お粥、温まった・・・。あれ?寝てる・・・?」 デントは穏やかに寝ているカリナを見つめた。
(そんなに無防備にして・・・。やっぱり、ほっとけないなぁ・・・。) デントはお粥を机に置いてベッドの脇に座ってカリナの髪の毛に指を優しく絡めた。
『・・・。ん・・・。デント。何時来たの?』 眠たそうにカリナは目を擦った。
「今さっき。 お粥、1人で食べれる?」 机に置いたお粥をベッドに運び直した。
『食べれます・・・。』
「それは残念だなぁ・・・。」 少しそっぽも向いて応えるカリナに悪戯な口調で返した。

『今日はせっかくのデートをご免なさい・・・。』 食べ終わったお粥を運ぼうとしたデントに言った。
「気にしてないよ。 これからはちゃんと言ってね。 言わないとねぇ・・・。」 悪戯そうな笑みで言い続けるカリナに少し恐怖心を抱いたがカリナは
『言わないと? どうなる・・・んん!!??』 話している途中のカリナの唇にデント自身の唇を重ねた。
いきなりのキスに戸惑いを感じるカリナ。
「御馳走様♪美味しかったよ。」 にっこりと涼しい顔をしてカリナに言った。
『・・・。苦しかった・・・。』 何時もより長いキスに少し怒りを覚えた。
「何がかな? 罰だよ。次はこれでは済まないよ・・・。」 土鍋を床に置いてカリナをベッドに倒した。
『えっ!?何??』 まだ熱のある体で頭の回転が出来ずに茫然とした。
「さぁ、この続きは秘密で♪ もう少し寝た方がいいよ。熱も下がんないしね。」
デントはベッドから体を起して床に置いた土鍋を持って出て行った。
『・・・。何だったんだろう?』 カリナは考えながら眠った。

※※※
翌日、カリナはサンヨウジムの裏口から入った。
「カリナかぁ。今日は体調、良さそうだね。」
『お陰さまで。有難う。』 昨日の夜にデントに家まで送ってもらってからお粥を作って行ってくれた。
「そう、良かった。僕はやっぱり元気なカリナを見る方が好きだなぁ。」 デントはゆっくりとカリナの前に歩み頭を撫でた。
『うぅ・・・。恥ずかしいからやめてよぉ・・・。』 カリナは必死に抵抗してデントの手首をつかんだが男の力には叶わず逆を尽かれてしまった。
「じゃあ、やめるね。次の為に取っとかないと僕も詰まらないし。」 にっこりと笑ってデントはカリナの唇だけ奪ってホールに足を運んだ。

『罰って・・・。何をするんだろう・・・。』 カリナは少し恐怖心があったが考えつつデントの後ろ姿を見送った。

END





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