『・・・。やっと出来た。』 カリナはため息をしながら天井を見ながら、壁に掛けてある時計に目をやった。
『12時かぁ・・・。これだけして寝て明日に備えよ。』 手にしていた物を紙袋にいれて綺麗にラッピングした。

※※※

Pipipipi・・・・・
目覚まし時計が大きく響いた。

ガチャン

『・・・。朝かぁ・・・。怖いなぁ・・・。とにかく行かないと・・・。』
カリナは夜中に包んだ紙袋を手にして外にでた。
デントと付き合って半年位たつが、未だにファンからの視線を気にしているカリナでコーンやポッドからは自信を持つようによく言われていたが出来ない。
色々と考えているうちにジムの前についていた。
【・・・。誰もいませんように・・・。】 無意味な事を祈りながらカリナはドアに手をかけて開けた。




案の定、中には沢山のお客さんが居て、ため息をついて出ようとしたとき、
「らっしゃい。カリナ!!デントに用か?」 ポッドが楽しそうな顔をして聞いた。
『うん、そうですけど・・・。皆、忙しそうだね。』
「そっか?何時もの事だけど?」
『そうですよね・・・。じゃぁ、また後で来るね。デントさんにもそう伝えてください。』 カリナは周りからの痛い視線を感じながら答えた。
「えぇ!?何でだよ!!・・・っておい!!」 逃げるように走り去ったカリナを見送った。

「何してるの?ポッド。」 ドアの前に立っているポッドに聞くデント。
「おぉ!さっきカリナが来てたゼ!」
「カリナが?今、何処に?」 デントは少し驚いて聞いた。 カリナから来る事は滅多に無かったからだ。
「さっき、出てった。また来るって。」
「そっか・・・。何か、気を使わせたかな?」
「大丈夫じゃねぇ?早く動かないとコーンに怒られるぞ・・・。」
「うん・・・。」 
2人は持ち場に戻った。
その様子を遠くで見ていた人たちがいた・・・。

※※※

『寒いなぁ・・・。』 ハァ〜白い息を出して自分の手を出して擦り合わしていた。
「ねぇ、今良いですか?」
『え? あの・・・何ですか?』 3人の女の人が近寄ってきた。
「さっき、ジムのレストランに来てましたよね・・・。」
「・・・。そのプレゼントはデント様にですか?」 冷たい視線がカリナに降りかかる。
『そうですけど・・・。それがなんでっ・・・キャァ!』 2人に腕を掴まれ、1人の女性に紙袋を取り上げられた。
『!!??何をするのですか?』 自分が何故、こうなっているか理解できなかった。
「・・・。こんなプレゼントでデント様が喜ぶとでも思ったの?」
『・・・。えぇ!?』 カリナの目の前で紙袋が地面に投げ捨てられた。
「こんなの、こうします!きちんと見ていてください。」 その地面に投げつけた紙袋を踏もうとした。
『!!??』 カリナは怖くなってキュッと目を瞑った。
「キャァ!!!!」
『・・・・?』
「くっ!!」
『えぇ・・・。どうして・・・。』 そこにはプレゼントを庇うように手を踏まれているデントの姿があった。
「なぜ・・・デント様が!!!???」
「何しているのかな?酷い事をする女性は嫌いだなぁ・・・。」 冷たい視線で、女の人を睨みつけた。
「・・・。し、失礼します!!」 女の人たちは一目散に逃げて行った。

『あの・・・、手・・・大丈夫ですか?』
「あぁ・・・。大丈夫だよ。」 少し赤くなった手を擦りながら穏やかに笑った。
カリナは持っていたタオルを水で濡らしてデントの手を冷やし、ハンカチで軽く縛った。
『・・・。多分、これで大丈夫だと思います。』
「有難う。それより、これは僕にかな?だとしたら、開けてもいいかな?」
『えぇ・・・。はい・・・。でも・・・。』 
【潰れているかも・・・。】 カリナは不安に思った。
デントは少し嬉しそうな顔をして紙袋を開けた。
「これは・・・。」 
紙袋の中には、薄緑の革製の手袋ときちんとラッピングされているが、中身が崩れたトリュフが入っていた。
『手袋は市販ですが・・・。デントさん、何時も買い出しで寒そうだったので・・・。チョコ、台無しですね。』
頑張って笑いながら言おうとしたけど次から次へと涙が出てきた。
「大丈夫だよ。美味しいよ。カリナも、ほら。」 トリュフを差し出され、カリナは一つ取って食べた。
「美味しいでしょ?」 デントの言葉に頷く事しか出来なかった。
そんなカリナを見てデントは優しく抱きしめた。
「大丈夫だよ。凄く嬉しい。きちんとカリナは僕の事を見ている。」 泣いているだけのカリナの頭をなで続けた。
「カリナ、観て御覧。綺麗だよ。」
『えぇ・・・?本当だぁ・・・。』 夕焼けがサンヨウシティを赤く染めていた。

「カリナはカリナだよ?周りが何を言っても・・・。コーンやポッドが言っている事、気にしなくて良いよ。焦らなくても良いから・・・。」 デントの言葉がカリナの心に響いた。

今まで、焦ってた。デントに少しでも喜んでほしい為に・・・。でも、そんな事、無かったんだとカリナは感じた。
『うん・・・。有難う。でも、自分自身では治したいので・・・。ゆっくりでも良いですか?』
「勿論。」 デントは優しく微笑んだ。
あどけないカリナの姿を観て、デントは手袋をつけて片方だけカリナの手につけた。
「片方はこんなんだから。有難う。手袋、物凄く温かいよ。」 少しした行動だがカリナは物凄く赤面した。
『ど、どう致しまして。』 

(やっぱりカリナは可愛いなぁ)
「カリナ、こっち向いて?」
『・・・? !!?? 』
デントはカリナの額に軽く口付をした。
カリナは少しビックリして顔を伏せた。
「寒くてお身体が冷えましたね。ジムで紅茶かココアを飲みますか?カリナ様。」
丁寧な口調で喋るデントに少しビックリしながらだがカリナは静かに頷いた。

何時かは、穏やかな笑顔で笑いあえる未来を信じながら帰路をゆっくりと歩いた。
2人に影は長く伸び続けていた。

END


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第3回BLove小説・漫画コンテスト結果発表!
テーマ「人外ファンタジー」
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