小説 | ナノ


動き出した物語





「綱吉ーっ、一緒にお弁当食べよー!」

お昼休み、先生に押し付けられた用事から帰ってきた綱吉に、ぶんぶんと手を振った。
あれから早数ヶ月。
私と綱吉は見事同じクラスになれて、黒川花や笹川京子とも仲良くなれた(二人共一緒にケーキ屋さんに行ったりする仲)。
綱吉はやっぱりというか、原作通り京子が好きらしく、たまに京子の方を見て赤面してたりする。

それから、あの後分かった事だけれど、なんと、私の家と綱吉の家は隣同士だった。しかも、部屋は窓を開ければそのままお互いの部屋に入れてしまう構造となっていたのだ。
まあそんな偶然が重なり、沢田家とは家族ぐるみ(私は家族居ないけど)の仲になった。

「今日は天気が良いから屋上で食べよう?」
「うん」

綱吉の笑顔に、思わず私の顔も緩む。
綱吉ってば、元々顔立ちが整ってるから笑うとそこら辺の女の子より断然可愛い。みんなはダメツナなんて呼んでるけど、私は気にしない。
綱吉は人よりちょっと苦手な事が多いだけで、良い所だってたくさんあるんだ。
そんな事を思いながら、私は綱吉と一緒にお弁当を食べる日々を送っていた。











翌日、何時ものように身仕度を整えた後、綱吉の部屋に続く窓をノックして窓づたいに綱吉の部屋に入ると、いきなり綱吉がこの世の終わりみたいな顔しながら抱き着いて来た。

「わ、どうしたの、綱吉?何時も私が抱き着くと「抱き着くなよ!」って怒るじゃない」
「初音…どうしよう…」
「……?」

とりあえず、このままだと遅刻しちゃうので、行きながら綱吉の話を聞くことにした。
どうやら、昨日奈々さんが雇ったという黒スーツを着た赤ん坊に「死ぬ気弾」とか言う弾を打たれ、パンツ一丁で京子に告白してしまったらしい。

「そっそれでね…!!」
「うんうん(まずったな〜、まさかもう原作に突入してたとは…)」

綱吉の言葉に適当に相槌を打ちながら、これからの事を考える。
原作に突入したなら、いずれ獄寺隼人や、三浦ハルなどが出て来るはず。
それに、リボーンもなんらかの事をきっとして来るだろう。
それに、多分黒曜編やウ゛ァリアー編もある。


いつかはこうなるって分かったけど、いざなってみると結構恐い。でも、未来が分からない綱吉達はこれからもっと恐いんだ。
なら、綱吉(達)の為に一肌脱ごうじゃないか。

「初音!? 聞いてるの!?」
「え?あ、ごめん。何だっけ?」
「ったくもう!」

むぅ、とむくれる綱吉に思わず笑う。
未来の事を考えるとやっぱり恐いけど、この世界に来て最初に仲良くなった大切な人だから、私が絶対守ってみせる……。





動き出した物語
(綱吉を)(ボンゴレなんかに譲ってやるもんか)







.